学長任職式に引き続いて行われた聖学院大学・大学院入学式では、姜氏が式辞の中で、元ジャーナリストで後にキャスターを務めた故筑紫哲也氏が好きだった19世紀のイギリスの詩人テニソンの「I am a part of all that I have met.(私という人間はこれまで会ってきた全ての一部である)」という言葉にふれた。
姜氏は、どうしてその言葉を筑紫氏が好きだったのか筑紫氏にたずねたところ、「自分は自分を語るのが恥ずかしい。しかし自分は多くの人々と出会ってきた。自分の中にある多くの人々との出会いというものはとてもとても大切だった。その中で友と出会うというのが最も大切だった」と筑紫氏が言ったのを聞いて非常に感銘を受けたと同時に、「私自身もそうだったと思いました」と述べた。
そして、姜氏は、自らに高校まで友がおらず、不安で自分の城に閉じこもっていたが、大学に入って(親友ではなく)「心友」(しんゆう、心の友)に出会い、自分の城から出ようという勇気を与えられ、友を知ることによって光を感じることができ、彼が49歳で亡くなるまで30年以上交流があったという自らの体験を語った。そして、「私の中に彼は生きている」と姜氏は付け加えた。
「自分が生涯の友といえる人と大学で出会ってほしいですね。大学はそういう場です。大学の4年間で新入生諸君にとって最も大切なことは、友と出会うこと。そのためには、自分の城から出なければなりません。城の中に閉じこもってただひたすらいいことがあるのを待っているだけでは、決して友と出会うことはできないのです」と姜氏は強調した。
また、姜氏は「最も大切なことは、このかけがえのない青春の中で、一人、自分の生涯の友と言える人と出会うことです」と語りかけた。
さらに、姜氏はヨハネの手紙一2章10~11節を引用し、「真に語れる友をもてば光の中にあり、そしてさまざまな悩みというものはきっと消えていくはずです。皆さん、4年後、このチャペルで卒業式を迎えましょう。そして私が今日皆さんに言った言葉を胸に噛みしめながら、チャペルを出て、社会に巣立っていってほしいと思います」と述べた。
その上で、姜氏は「そして皆さんが4年間をこの大学で学んだことが自分の社会に巣立つ大きな大きな苗、そしてそこで自分の糧を得たという実感を持てるように、4年後、卒業式を皆さんと一緒に迎えたいと思います。本当に入学式おめでとう。一緒にやりましょう」と締めくくった。
姜氏は1950年熊本県出身。専攻は政治学・政治思想史。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学後、旧西ドイツへ留学。国際基督教大学准教授、東京大学教授などを経て、2013年から聖学院大学全学教授に就任し、全学部で春学期に2年生以上を対象に「キリスト教とデモクラシー」という科目を教えていた。同年7月22日の同大学理事会で、次期学長に選任されていた。
なお、米国のキリスト教ディサイプルス派の流れをくむ聖学院は、マタイによる福音書第22章37節~第39節を基に、「神を仰ぎ、人に仕う」をその学院標語としている。聖学院大学は1988年に社会政策学者の金井信一郎氏を初代学長として開設された。
■ 姜尚中氏、聖学院大学学長に就任:(1)(2)