先週末のクリスマスに、ナイジェリアではイスラム教急進派が5つの異なる都市に位置するキリスト教教会を爆破した。ナイジェリアにおける宗教対立が高まる背景には、単に信仰の相違という理由だけではなく、複数の要因が絡んでいることが専門家らによって指摘されている。27日、米クリスチャンポスト(CP)が報じた。
26日米CPは、25日のクリスマスにナイジェリアのマダラ、ジョス、カノ、ダマツツおよびガダカ市の諸教会がテロリストによる爆破攻撃を受け、39人が殺害されたと報じた。その後急進派による暴力が激化し、ポチスクム市では放火によって30店舗のキリスト教徒の経営する店舗が火災に遭い、民間人が避難せざるを得ない状態になった。
米外交問題評議会アフリカ政策研究シニアフェローのジョン・キャンベル氏は、ナイジェリアの宗教問題の背景には同国が抱える経済格差の問題があると指摘している。キャンベル氏は「ナイジェリアの宗教対立は民族的、宗教的そして経済的な問題が同時に重なって生じる傾向があります。これらすべての要素がそれぞれ関連し合っています」と述べている。キャンベル氏によると、ナイジェリアはアフリカでもっとも人口の多い国で、国内には1億6500万人もの人々が在住していると推定される。民族的、経済的な相違の問題が全土に蔓延しているという。
ナイジェリアでは350もの異なる民族が混在しており、それぞれの部族の違いによって職業も細分されているという。そのことが宗教的対立に拍車をかけており、ナイジェリア国内を南部のキリスト教地域と北部のイスラム教地域に二分する動きにつながっているという。そのため一つの主張を一方が行えば、それに対立する主張を他方が行うという動きが生じ、それぞれの宗教における言論者が対立する宗教を侮蔑する発言をするため対立が止まない状態が続いているという。
インターナショナル・クリスチャン・コンサーン(ICC)アフリカ地域マネジャーのジョナサン・ラチョ氏は、二つの異なる信仰による深刻な対立状況は30年前から続いていると指摘する。時間が経過するにつれて、ナイジェリア国内の貧富の差が拡大し、ナイジェリア政府の退廃も進んでおり、イスラム教のシャリア法を利用したイスラム教急進派の活動活性化に影響を与えているのだという。ラチョ氏は「ナイジェリアの宗教対立の第一の原因はイスラム教の信仰にあります。ナイジェリアのキリスト者には多くの支援が必要です。継続的な教会に対する攻撃が生じています」と述べている。
ハドソン研究所上席研究者のニナ・シー氏は、ナイジェリア国内でのシャリア法を支持する動きが、キリスト教徒とイスラム教徒の宗教の自由を巡る対立を激化させていると指摘している。ボコ・ハラム(西洋の教育は罪)のようなイスラム教急進派がクリスマスの聖日の教会爆破活動の背景に存在しており、これらの急進派組織はナイジェリア国内に厳格なシャリア法を適用しようとしているという。これらの組織の活動が国内に蔓延することで、ナイジェリア全土が廃退する危険性もあるという。シー氏は「ナイジェリアはアフリカでもっとも人口の多い国であり、重要な石油輸出大国で、米国の同盟国でもあります。人道的、地政学的な両方の側面から同国の宗教対立が激化しないようにしていくことが重要です」と述べている。
キャンベル氏によると、この数十年間でナイジェリア国内のキリスト教徒数は急増しているという。
キリスト教迫害監視団体オープン・ドアーズメディア・リレーションディレクターのジェリー・ディクストラ氏は、ナイジェリアの宗教対立の激化はその背景要因に関わらずキリスト教徒が懸念しなければならないことであると警告している。オープン・ドアーズではナイジェリアを2011年にもっとも殉教者の多い国であったと発表している。11月1日の時点でナイジェリアでは今年300人の殉教者が生じたことが明らかになった。その後クリスマスにかけて爆破活動が生じた結果、殉教者数はさらに増加した。ディクストラ氏は、ナイジェリア国内での宗教対立の激化は、世界中のキリスト教会にとって懸念すべき問題であると警告し、「キリスト者として私たちはボコ・ハラムがナイジェリアの平和を乱し、紛争状態にならないように注視していく必要があります。ナイジェリアから数千人もの宣教師がアフリカ各地に派遣されています。そのためナイジェリアが紛争状態になれば、アフリカ大陸中に福音が伝わることを阻害することにつながります」と述べている。