ローマ教皇ベネディクト16世は22日、クリスマスメッセージを発表し、その中で欧州経済危機の原因について言及、カトリック聖職者らに対し、「年の瀬を迎える中にあって、欧州は経済面、金融面で危機的な状況に直面していますが、この問題のつまるところはこの古い歴史を有する(ヨーロッパ)大陸における倫理的な危機が生じているところにあるといえます。連帯感、隣人への奉仕、貧しい者、苦しむ者に対する責任に関して無関心になり、個人の行いや社会全体において、自制することや犠牲することに欠けた動機がその背景にあります」と述べた。
2009年から始まった欧州金融危機によって欧州各国の国債の格下げが生じた。特にギリシャ、アイルランドおよびポルトガルが金融危機による激しい打撃に見舞われてきた。金融アナリストのジャニス・エマヌイリディス氏は、ボイス・オブ・アメリカに対し、「欧州金融危機の規模が歯止めのきかないところまで達してしまったのかどうかは定かではありません」と述べている。
今年のローマ教皇のクリスマスメッセージは、経済と倫理について言及した2度目のメッセージとなった。2009年には教皇が経済と真実なる慈善の在り方について言及し、「今日の国際的な経済状況は、本筋から逸れ、欠陥が多々生じており、ビジネス全体を理解するより深い新しい道を要求しています。長期的な視点で言えば、経済は倫理的な人格とは独立したものであると思いこむことによって、経済、社会、政治システムが個人や社会の自由を踏みつけるようにさせてしまったとも言えるでしょう。そのため個人と社会の自由が約束する正義を伝えることができなくなってしまったのではないでしょうか」と述べていた。
教皇は、経済を動かすには倫理観が必要であるとし「正しい人格の備わった男女が織りなす社会なしに発展は不可能です。金融専門家や政治家も、最終的には共通の益に資する要求に敏感な判断力を持っていなければなりません」と述べた。
25日正午から行われた降誕祭のメッセージでは神の御子であるイエス・キリストが「救い主」として人間の歴史に深く根差した悪から人類を救うために父である神から遣わされたことが説明された。
教皇は「悪とは、神から自分を引き離すことです。自分だけで行動し、神と競争し、神に取って代わり、何が善で何が悪かを決め、生と死を支配できると考える高慢です。これこそが大いなる悪、大いなる罪です。人間は、神の助けに身をゆだねないかぎり、すなわち、神に叫び声を上げないかぎり、それから自分を救うことができません。『私たちを救いに来て下さい』と天に祈りをささげることが、私たちを正しい状態に戻します。自分についての真理のうちに戻します。イエス・キリストは、神が私たちの叫び声を聞いてくださったことの証拠です。そればかりではありません。神の私たちに対する愛はあまりに強かったので、神はご自身のうちにとどまっていることができず、ご自分を出て、私たちのところに来られました」と説明した。
そしてイエス・キリストが示した道について「私たちの期待を限りなく超えた連帯となりました。人間的な連帯であるだけでなく、神的な連帯でした。愛である神、また神である愛のみが、このような道を通して私たちを救うことを望むことができました。この道はもっとも長い道でありながら、ご自身と私たちの真理を尊重する道です。すなわち、和解と対話と協力の道です」と述べた。
2011年の降臨祭を迎え、教皇は、「私たちを救いに来てください」と主に祈り、特に困難な状況に置かれた多くの人々と霊的な一致のうちに、声なき人々の声となっていくことを求めた。降臨祭では、教皇によってアフリカの角(ソマリア)の人々の飢餓と食料不足、政情不安に対して国際社会が十分な支援を行っていくことができるように、東南アジアの洪水による災害からの復興、イスラエルとパレスチナの人々の対話の再開の促進、シリアの暴力の抑制、イラクとアフガニスタンにおける完全な和解と安定の促進、北アフリカと中東諸国の社会を構成するすべての人々に、共通善を築くための新たな力が注がれるための祈りがささげられた。