【ワルシャワ=ENI・CJC】(ジョナサン・ラクスムーア)ポーランド最大の児童保護団体が、苦情の高まっている司祭の性的虐待問題に応答するようカトリック教会に要請した。
「事件の規模が問題なのではなく、教会の態度が問題だ。これまで司教協議会は何も述べていない」と、ワルシャワに本拠を置く独立系の児童保護財団のヤコブ・スピエワク会長は言う。同財団は虐待被害者のためにホットラインを運営、保護のため7プログラムを実施している。
「カトリック教会はここでは特別な地位を保持している。しかしこのような問題について語れなかったら、その地位を失い始めるようになるかもしれない」と、スピエワク会長は語る。同氏は、司教協議会会長のヨゼフ・ミハリク大司教とのインタビューを出版したが、ポーランドの教会指導者である同大司教は、カトリック聖職者の「不当な行動」には出来ること全部を行っている、と語ったと言う。
同団体は「沈黙は金ではない」というキャンペーンを展開、被害者が表面に出て来るよう力づけている。ただスピエワク会長は、司祭が「最高権力者」になっている小さい町や村では、警察や役場が虐待が疑われる司祭に立ち向かうことを恐れる場合もある、と言う。
2002年、ポズナンのユリウス・パエツ大司教が、神学生にみだらな行為をしたとの報道を受けて辞任したが、それ以来、カトリック関係指導者は、虐待されたという訴えへの対応を明確にするよう教会に要請していた。
ただ虐待被害者の運動は、米国からの支援もあって組織されたばかり。運動関係者は、痴漢とされた聖職者数十人が執行猶予付きの禁固刑の判決を受けただけで、ほとんどが今も小教区で、しかも児童と一緒に活動している、と指摘する。
他国でのスキャンダルについては広く伝えている同国カトリック通信「KAI」も、自国のことはほとんど報じていない。
聖職者への性的虐待告発は、ここ20年にわたりアイルランド、独、オーストリア、米国などのカトリック教会に大きな影響を与えている。
この5月、バチカン(ローマ教皇庁)は全司教協議会に対し、2012年5月までに虐待問題に関する指針を作成、児童保護プログラムを開始、教区間の聖職異動の情報交換、被害者に対し「霊的心理的援助」を確実に実施するよう指示した。
しかし『絆』という名のカトリック月刊誌は最近の特別号で、ポーランド教会の聖職者に対する心理的チェックや、退任者に対する「明確な規範」が不十分で、虐待告発への対応に関する「情報方策」や「行動規範」もない、と指摘している。
スピエワク会長は、同誌の警告が無視され、ほとんどの司教が「異常な弛緩」を見せている、と言う。「失望が高まっている。司祭に対する批判は、それが忠実なカトリック者によるものであっても、教会と信仰に対する正面からの攻撃とされる」と同氏は語った。
「もしも教会が法律を守り、問題の司祭を教会法上の、また犯罪責任からかばうことを止めないと、他国の教会と同じ危機に直面することになろう。しかし指導者たちは、問題をただ避けられると考えているようだ」と言う。