イスラム教徒はイスラム教の教義が暴力や差別と切り離せるように改革していかなければならないと主張する議論を醸す書籍が10月に出版された。同著『監視されていないイスラム教』では、政治的、宗教的な幅広い視点からイスラム教を理解するために14人のイスラム教に関する人々にインタビューした内容が掲載されている。
同著著者のジェフ・キング氏は、国際キリスト教コンサーン(ICC)代表を9年間務め、キリスト教に対する迫害について監視、研究してきた。キング氏は、米国人はイスラム教急進派というときに、この言葉の意味を取り違えるべきではないと警告しており、イスラム教急進派の異宗教者への迫害は、世界平和における最大の脅威であるとの自論を保持している。
米クリスチャンポスト(CP)とのインタビューを通して、キング氏はイスラム教について良い所も悪い所も包み隠さず開かれた対話をしていくことだけが、イスラム教の中から危険な要素を取り除くことにつながると主張している。このアプローチによって生じ得る問題点としては、発言が過大に取り上げられたり、偏屈な宗教者とのレッテルをはりつけられる懸念があることがしいて言えば挙げられるという。
CP: イスラム教の変革について書かれた新書「監視されていないイスラム教」では、イスラム教の実態についてありのままの追求をされておられます。この本の出来栄えについてご自身でどのように思われますか?
キング氏:拙著においては、たくさんの政治的な問題が取り上げられており、読者の皆様にイスラム教について包み隠すことなく対話するための素材として利用していただければと願っています。イスラム教が現代社会に即した在り方を取らなければなりません。イスラム教について、相手を憎むことなく、敬意と誠意、そして愛をもって相手と対話して行くことが必要だと思います。
CP:イスラム教急進派から無神論者までさまざまな方々とされたインタビュー記事を掲載されておられますが、一連のインタビューを通じて、イスラム教について最も印象に残ったことはどんなことでしたか?
キング氏:一連のインタビューを通して、異なる政治的立場、宗教的立場にある人たちであるにかかわらず、ある共通の見解を述べていることを知って驚きました。一連のインタビューを通じて心が惹きつけられたこととして、彼らの間に共通するものを発見できたことが挙げられます。イスラム教の信者の方々が、無神論者が主張することと同じことを主張していることも知ることができました。
他にもイスラム教を背教して米国その他非イスラム教国へ脱国した人の話からも衝撃を受けました。それらの人々は皆無神論者かキリスト教徒かになったわけですが、現在も彼らはイスラム教を背教したことで狙われているということです。非イスラム教国、さらには米国でさえも、彼らは危険の中に過ごしていることを知りました。イスラム教を信じていた時の友人らが背教後も彼らを見つけようとしているとのことです。
CP:イスラム教を大胆に批判されておられますが、そのような批判を大々的に行うことでイスラム教急進派がキングさんを攻撃してくるのではないかという心配はないのでしょうか?
キング氏:これまでイスラム教急進派について公に批判をしてきましたが、私がそのことによって狙われているかどうかはわかりません。私がインタビューをしてきた人たちの中には、アルカイダ組織の制作したビデオの中で「殺すべき人間」として挙げられていた人もおります。
肝心なことは、今私たちは真実を語り、真実の側に立つ必要があるということです。私たちの日々は(神によって)記録されており、私たちは主の御手の中にあります。ですからもし私たちが何か真実を語るように導かれたならば、そうするべきでしょう。
CP:一方で、単にイスラム教徒であるというだけでイスラム教を怖がることを批判する人たちもいらっしゃいます。この「イスラム教恐怖症」についてご自身ではどのように解釈されていますか?
キング氏:「イスラム教恐怖症」というのは馬鹿馬鹿しい言葉だと思います。恐怖症という言葉でくくるのは合理的ではありません。たとえばピストルや爆弾を持っている人たちを恐れるというのも合理的ではありません。イスラム教急進派は他者を進んで殺したり、傷つけようとしています。このような人たちには恐怖を感じるでしょう。言葉の上での遊び事は止めて、イスラム教急進派について真剣に議論しなければなりません。
私はある人々を憎しみの対象とはさせたくありません。人類というのはもともと部族的な単位でまとまり、異部族に対して敵意を抱こうとする傾向があります。主は私たちに「私たちを憎み、迫害する者を愛しなさい」と教えておられます。私たちはイスラム教急進派を憎むこともできますが、イスラム教徒を愛することもできるのです。イスラム教の信仰自体を批判するのと、イスラム教を信じている人々の様態について批判するのは異なります。
CP:イスラム教の良い側面としてはどのような所が挙げられるでしょうか?
キング氏: イスラム教徒は一般的に道義を尊重します。彼らは神を恐れる人々であり、他者をもてなす素晴らしい感覚を持ち合せています。そのような点においては、イスラム教徒を尊敬しています。
CP:ほとんどの米国人は、イスラム教急進派の危険性を9.11テロ事件で知るようになったと思います。当時キングさんは何をされていらっしゃいましたか?またこの事件についてどのように感じられましたか?
キング氏: 当時私はキャンパスクルセード・フォー・クライスト(CCC)で奉仕していました。貿易センタービルの一棟目に飛行機が突撃した時に、ちょうど車を運転していました。テレビでその様子を見て頭痛がしたのを覚えています。多くの犠牲者が生じ、また建物が破壊されたその日、多くの方々の悲しみの声を聞きました。
CP:執筆活動以外にも、世界各国のキリスト教に対する迫害を監視する組織ICCの代表という肩書もお持ちですね。イスラム教徒はキリスト教徒を迫害することでどんな役割を果たしていると思っているのでしょうか?
キング氏:キリスト教を迫害する焦点、また迫害を行う中核となる人々については、私が9年前にキリスト教に対する迫害を監視し続けてから現在に至るまで変化を示しています。以前はキューバ、アフリカ、アジアでマルクス主義を広める人々がキリスト教を迫害する中心的存在でした。
しかし現在では、キリスト教に対する主な迫害者はイスラム教徒にシフトしてきています。イスラム教社会の中に隣り合わせに暮らすキリスト教徒たちは、さまざまな差別的扱いに直面しており、時にはキリスト教の信仰を持っているというだけで収容施設に入れられたり、誘拐されたりすることも生じています。サウジアラビアはこの30年間もっともイスラム教急進派の勢力が強い国で、世界中にモスクを建設し、その建設した世界中のモスクへイスラム教急進派の聖職者らを派遣させてきました。
このような動きが9.11テロ事件やイスラム教急進派の拡散につながって行ったと見られます。イスラム教の世界では急進派と平和を求めるイスラム教徒とに分かれてしまっています。