世界教会協議会(WCC)は18日、エジプトで9日の主日に生じたコプト教徒とエジプト軍部の衝突事件で25名が死亡し、そのほとんどがコプト教徒であった事件を受け、コプト教徒の同国における正義と非暴力を貫き、軍部と交渉を行う道を支援していく旨を発表した。
ムバラク政権追放後のエジプトでは、民主主義政治への移行過程にあり、現在はエジプト軍最高評議会(SCAF)が暫定統治を行っている状態にある。エジプト国内のキリスト教徒の人口は同国全体の10パーセントで少数派となっており、その大半はコプト正教、コプト長老教会、メノナイト、ギリシャ正教、カトリック、アルメニア正教会、アルメニアカトリック教会で構成されている。
エジプト国内のキリスト教徒は、同国宗教過激派がしばしば標的とし、信仰活動を脅かされる状況下にある。政権の移行過程にあるエジプトにあって、同国キリスト教徒の立場にいっそう懸念が生じるようになっている。
エジプト国内キリスト教徒らは、9日に生じた暴力事件や、今年に入って生じた2件のキリスト教会の放火事件について非難している。エジプトのプロテスタント教会が最近発表した声明文では、「エジプト諸教会は、社会的・政治的移行過程にある同国内で生じている暴力行為を受け入れることができません。そのため同国のすべての人々に対し、共に肩を並べてこれらの事件に立ち向かっていくことを呼びかけます。すべてのエジプト国民に、暴力行為を受け入れず、そのようにしていくことで、全ての人にとって礼拝できる場所が建設され、統一した立法機関を創設していくために共に働きかけて下さることを願っています。エジプト人として、イスラム教徒であってもキリスト教徒であっても、9日に生じた衝突事件について早急に調査を行い、この多くの犠牲者が生じた悲劇的な事件の責任がどこにあるか説明可能とするように呼びかけて行かなければなりません」と述べられていた。
他にも社会奉仕のためのコプト教福音主義組織がジャーナリスト、学者、宗教指導者、青年、メディア関係者らを含む市民社会活動家と協力してエジプト国内の治安を安定化させるための合同シンポジウム「対立宗派の緊張関係に共に立ち向かうために」を開催し、共同声明文を発表した。
共同声明文では「私たちはすべてのエジプト国民に暴力の終焉を遂げることを呼びかけます。今行動しなければなりません。私たちがこれから築き上げようとする将来の偉大な国家としてのエジプトを救うためにも、私たちが良く知り愛する国エジプトが分裂と暴力の遺物と化してしまうような将来を選ぶことのないようにしなければなりません」と述べられた。
WCC総幹事のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト博士は、エジプト国内諸教会が国内の平和と対話促進のための声を積極的に発信する努力をしていることを称賛し、「私たちは教会として10月9日に生じたコプト教徒に対する痛ましい事件を生じさせた暴力を非難します。祈りのうちに犠牲者の方々を覚えます。キリスト教徒、イスラム教徒その他エジプト人の方々が平和の道を共に模索していくことが、派閥間の抗争を収めることにつながります。私たちはこの困難な時を覚えて、エジプト諸教会と共に同じ立場に立っています」と述べた。
WCCは「パブリック・ウィットネス」というプログラムを通して、中東圏の諸教会とともに平和の道を模索している。同プログラムでは国際レベルで国家、地域社会に平和と正義を伝えるために超教派関連諸教会パートナーと連携した取り組みを行っている。