イエスは立ち止まって、彼をそばに連れて来るように言いつけられた。彼が近寄って来たので、「わたしに何をしてほしいのか。」と尋ねられると、彼は、「主よ。目が見えるようになることです。」と言った。イエスが彼に、「見えるようになれ。あなたの信仰があなたを直したのです。」と言われると、彼はたちどころに目が見えるようになり、神をあがめながらイエスについて行った。(ルカによる福音書18章35-43節参照)
5月半ば、美しい新緑の季節。戸外の輝く新緑のように私たちの心も輝かしくなるよう主の恵みに満たされたいものです。
物質的豊かさに反比例し、日本では大切なものを失い精神的にも貧弱になっていると感じることが多くあります。
日本の教育は進んでおり、知的水準が高いといわれていたのはつい十数年前です。それが今では、学生たちの学力が、ガタ落ちしていると実感し危機感を覚えているのは現場の先生だけではありません。
この春、ある短大生の意識調査のアンケートをした時、質問の意味が分からない学生が続出したそうです。ごく普通の語彙(ごい)「怠惰(たいだ)」「まごまごする」「骨が折れる」の意味を理解できないのです。また、別の調査では中学生の4人に1人が鬱(うつ)傾向にあるとの結果が出たといいます。
いずれも社会の豊かさが仇(あだ)(これも今の若者には分かり難いかも)となり、人の心に逆に悪影響を及ぼしています。
学力低下の原因の一つはテレビゲームのし過ぎ。1日3時間計算で、高校卒業までの12年間で少なくとも1万時間はテレビゲームをしています。その間、様々な年代の人と会話し、本を読み、家族と共にテレビでニュースや時代劇を観ていたら、どれだけことばが増えるでしょう。
そして鬱傾向の大半の理由は睡眠不足です。夜更かしをせず十分睡眠をとれば、半分は必ず治ります。
豊かだと思われるもので、人生を破壊するものが日常生活のそこかしこにあります。しかし一方で教会の礼拝の中には、私たちを生かす神の恵みがあふれています。
私たちの教会は、50年前創設者の万代恒雄牧師が、街中でみかん箱の上に立って説教したところから始まりました。そして50年間蒔き続けた福音の種により、日本中、世界中で、何千何万という数え切れない人々が幸せの鍵を手に入れることができているのです。
教育の憂うべき現状を何とかしようと、政治も教育再生会議で提言をまとめてみたものの、真っ当な意見が素直に受け入れられません。特別な事例ばかりに配慮し過ぎて、結局は何も良いものが実行できないのです。
こうしてみると私が講壇で2千年来続く聖書から、神からの御言葉として私たちが向き合わなければならない真理を語らせていただける恵みに感謝せずにはいられません。人は赦すべき、愛すべきであり、人生を感謝すべきだ、あるべき姿に向けて私たちは変わらなければならないと語り、これに心の耳を傾ける人の人生に大きな平安と祝福をもたらすのです。
この箇所から、次のことを学びます。
1.自分に最も大切なものが何かを知るべき
イエスは「私に何をして欲しいのか」と問われ、真に欲しいもの、自分に最も大切なものが何かを問われました。私たちは、あれこれ欲しい物に囲まれ、本当に無くてはならないものを求める気持ちが弱くなっていないでしょうか。私たちが生きていくために一番必要なものを本当に求めているでしょうか。
この盲人は、お金や必要な助け手を求めることもできました。しかし、目が見えるようになることが彼の人生の変化にとって最も必要なことだと気付いていたのです。そしてそれを求めました。
人にとって必要なことは品物を選択するのとは違い、心の内なるものが満たされ、神に接ぎ木されて、神に結びつき、人生が変質することです。愛と感謝に溢れることです。
私たちも、いろいろな必要はあるでしょう。しかし最も必要なことに目を向け、それを主に求めましょう。
2.神に向き合い、素直に願う
この後に「あなたの信仰があなたを直したのです」という重要なことばが続きます。必要なものがわかったなら、私たちの人生を変える恵みの神と真正面から向き合うことが大切です。どれほど知識があってもそれをしなければだめです。神と一対一の関係で向き合って願うことが必要です。彼はただ一生懸命「目が見えますように」と願っただけでした。しかし、イエスはそれを彼の信仰として受け止め、彼の願いどおりにしてくださったのです。恵みの主は真正面に向き合い求める者の願いを聞き届けられます。
イエス・キリストに対し、信仰をもって、心の内側から癒され、清くされますように、神を愛し、人を愛し、神の平安に満たされますようにと願いましょう。この盲人に「あなたの信仰があなたを直した」と語られたように、神はあなたにも応えられ、あなたの心を整えてくださり、平安を満たし、感謝に溢れるようにしてくださいます。
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万代栄嗣(まんだい・えいじ)
松山福音センターの牧師として、全国各地、そして海外へと飛び回る多忙な毎日。そのなかでも宗教を超えた各種講演を積極的に行っている。国内では松山を中心に、福岡、鹿児島、東京、神戸、広島、高松にて主任牧師として活動中。キリスト教界のなかでも、新進気鋭の牧師・伝道者として、注目の的。各種講演会では、牧師としての人間観、ノイローゼのカウンセリングの経験、留学体験などを土台に、真に満足できる生き方の秘訣について、大胆に語り続けている。講演内容も、自己啓発、生きがい論、目標設定、人間関係など、多岐にわたる。
また、自らがリーダー、そしてボーカルを務める『がんばるばんど』の活動を通し、人生に対する前向きで積極的な姿勢を歌によって伝え続け、幅広い年齢層に支持されている。
国外では、インド、東南アジア、ブラジル等を中心に伝道活動や、神学校の教師として活躍している。