【CJC=東京】ロシア正教会モスクワ総主教座の対外担当ヒラリオン府主教が、教皇べネディクト16世と9月29日会見した。その後、大主教はバチカン放送に、「東方正教会は今なお、自らの間の権威という問題の解決を迫られている。それは将来的には『教皇職』に係るもので、それに関して正教会内に意見の相違、様々な立場がある」と語った。
「“ローマ司教”の首位権について論議するなら、ローマの首位権だけでなく、首位権自体について触れなければならない。正教会にはカトリック教会のような集中的な制度がないという異なった伝統があり、正教会内での“第一の長”の役割に関しては内部でも理解の差がある」と言う。同大主教の発言が『カトリック教会と正教会の間の神学的対話に関する合同国際委員会』の今後の方向に関してのものであることは明らかだ。
2007年にカトリック・正教会委員会が開催された時、ヒラリオン府主教も参加する予定だったが、エストニアの正教会を巡り、コンスタンチノープルのエキュメニカル総主教座とモスクワ主教座との間で対立があり、ロシア正教会が退席する事態となったことがある。両者はアメリカ正教会の地位についても対立している。
府主教は、これらの対立に関して明確に「もしもある正教会が他の教会に対する首位権という自らの考えを押し付けようとするなら、当然のこと困難に直面することになる。そしてこれが現在起きていることだ」と述べた。
世界各地の自立正教会が『汎正教会協議会』開催の動きも出ているが、それもコンスタンチノープル総主教の権威の決定を意図したもの。「その役割は名誉的な首位であるべきだと信じており、調整役でもある。たとえば汎正教会公会議を運営するようなことだ。それより以前、公会議を運営したのはコンスタンチノープル総主教でもなければローマ教皇でもなくビザンチン皇帝だった」として、「統一した見解を持たない限り、普遍教会における『プリムス・インテル・パーレス』(同格の中の第一番)が教皇職の役割だとすることについて安易に協議することは出来ない」と府主教は認める。
一方、2010年に発表した著書『世の光』の中で、教皇べネディクト16世は、教皇を同格の中の第一番とする見解は、その「特別な機能と働き」から見て、カトリック者として信じている形態とは全く異なるもの、と指摘している。
モスクワ総主教座が成立した1589年以来、教皇とモスクワ総主教との会談は未だ実現していないが、府主教は、それについても慎重な姿勢を見せた。
コンスタンチヌス帝によるキリスト教公認1700周年に当たる2013年に両者の会談が実現する、との観測もあるが、府主教は、カトリック者もロシア正教会信徒も、両者会談がいつ行われるか結論を急ぐべきではない、と語った。
教皇は、このほどドイツを訪問した際にも、現地の正教会代表と会談、人間はその義務のために尊敬されることを確実にするためキリスト者に共通する関わりについて言及した。
府主教も、教皇自身については好意的な発言をしている。「教皇は信仰の人であり、彼と会見する時にはいつもその霊、勇気、世界大の教会の生命に対する貢献によって力付けられる。教皇の正教会の伝統に関する教皇の知見、カトリックと正教会の間の対話についえの彼の関心には、深く印象付けられた。このローマ・カトリック教会首座の姿勢は、より良い相互理解に大きく貢献するものだ」と言う。