【CJC=東京】オーストリア・カトリック教会が分裂の危機に直面している。焦点は、司祭による教会内部改革の動き。ヘルムート・シュラー司祭を中心に300人以上の聖職者が、女性叙階、離婚・再婚者の聖体拝領許可など7項目を要求、教会指導部への不従順を呼び掛ける『不従順の宣言』に賛同して改革グループを結成した。
シュラー司祭ら代表はこの7月、同国首座司教シェーンボルン枢機卿と会合、7項目の要求を提出した、それに対し同枢機卿は、「ローマ(教皇庁)の路線に反するもので受け入れられない」と拒否、要求撤回と教会方針への従順を求めたという。同枢機卿は、教皇べネディクト16世の弟子の1人と見られている。
インスブルック教区では、信者たちの改革運動『われわれは教会』が生まれ、発展してきたが、今回は司祭たちの改革運動だが、「教会はこのままでは存続できない」といった危機感が強いことが背景にある。
オーストリアは、教会(小教区)の半数で修道者が教区司祭として活動している。また修道院長などの高位聖職者が約40人いて、それぞれが独自路線を歩んでいることも、問題を複雑にしている。
オーストリア修道会上長会議の会長マキシミリアン・フルンシン修道院長(ヘルツォゲンブルグ修道院)は、既婚高齢者にもミサの執行を認めるなどの改革提案を採用するか、少なくとも検討する価値のあることを認めるべきだ、としている。シュラグル修道院のマルチン・フェルホファー院長は「もうシェンボルン枢機卿だけでは解決出来ない。司教、修道院長、修道士や改革グループの代表などが共に討議しなければならない」と言う。
現在、改革グループは司祭4人が脱会、一方で86人以上が加入したので総勢400人と、同国全司祭の約1割に達したと見られる。さらに支援者も約1万2000人。
シュラー司祭は、全世界特にブラジル、米国、アイルランド、仏、独、伊、メキシコなどから支持の声を聞いている、とメディアとのインタビューで語った。これらの反応は、バチカンが全世界規模で問題に直面しているのが「はっきり」していること、「私たちの関心が漫画の主人公についてなどではない」ことを示している、と言う。
グループに厳しい批判が寄せられていることもシュラー司祭は認めた。「中には私たちをカトリック教会から完全に追放し、呪いたいとまで思っている人もいる。私たちを、教会を破壊する分裂主義者、反乱者と呼んでいる」と言う。
シェンボルン枢機卿は8月10日、要求をそのままにしてはおけないとし、教会の路線に立ち戻るか、教会を離脱するように指示した。枢機卿は「反省」の時間を与えたとしている。
枢機卿は、マドリッドで開催された『世界青年の日』に出席、29日、ウイーンに帰着したが、事態を深刻に懸念している、と同氏に近い筋が語った。反対派の主導者を聖務停止処分にする以外の道がないものの、結果的に教会を分裂させかねないからだ。オーストリア通信の調査では、市民の76・5%が反対運動を支持していることが分かった。
同国司教協議会副会長のグラーツ司教イゴン・カペッラリ氏は、グループが討議を望む聖職者独身制や女性の聖職叙階といった問題は「長い時間を掛けて克服すべき課題であり、短時間に十分な回答は出来ない」と語っている。