【ナイロビ=ENI・CJC】キリスト者が主体の南スーダンが7月9日独立して1カ月、イスラム教が優勢な北部のキリスト教会は、閉鎖を要求する政府や市民の圧力にさらされている。
教会指導者の中には、運営している学校や教会を閉鎖し、南への移転を考えている人もいるが、「北部のキリスト者」を自認しているだけに決断は容易ではない。
「誰もいなくなった教会もあるが、閉鎖命令が正式に出されたわけではない。当局が個人的に閉鎖するよう言ってくるだけだ」と、スーダン教会協議会のラマダン・チャン・リオル総幹事(バプテスト)がナイロビのENIニュース記者に電話で伝えてきた。同協議会にはカトリック、プロテスタント、正教会が加盟している。
南スーダン独立は、キリスト者、特に北部のキリスト者に、これまで認められていなかった教会運営の完全な自由が認められるものとの期待を持たせた。しかし現実は様々な団体からの圧力が増え続けている、という。
「司祭や牧師の名前を集め、それを元に、日曜日にミサや礼拝を行わないよう警告、聞かなければ殺すと脅している」とリオル総幹事。
首都ハルツームの当局者は、報道陣と会見することを禁じられており、在ナイロビ大使館も虐待については何も知らない、と語っていると言う。
カトリック教会ハルツーム大司教区のダニエル・アドウォク補佐司教は、信徒の多くが南に旅行した結果、献金減少に見舞われており、教会学校閉鎖も検討中、と語った。「父兄の多くは難民になってしまい、僅かな収入から学費を出すことなどできない。十分な資金なしに学校を維持して行くのは困難だ」と言う。
オマル・ハサン・アフマド・アル・バシール大統領は、『シャリア』(イスラーム法)に基づき、南部の分離後は、イスラム教を国教にする、と宣言している。8月7日、与党『国民会議』政治局のクトゥビ・アルマーディ氏は、関連法令がすぐに発布される、と『スーダン・トリビューン』紙に語った。
内戦で壊滅的打撃を受けた南コルドファン州では、英国国教会カドゥグリ教区のアンドゥドゥ・アダム・エルナイル主教によると、大聖堂や事務所が略奪された。
「武装した人たちが、わたしの名を呼びつつ家から家へと捜し回っていた」と同主教は8月4日、米下院アフリカ問題委員会で証言した。教会員が、スーダン軍と武装集団がカドゥグリで100人以上を埋葬したことを目撃したとも言う。
「今日、皆さんに証言するためにここにいなかったなら、わたしもカドゥグリで埋葬されていたかも知れない」とエルナイル氏。ヌバ山岳地帯ではスーダン空軍による市民への爆撃に関する情報が繰り返し届く、とも言う。同氏はさらに、国が民族浄化を進め、それが実際に展開されているのではないか、との人々の不安についても説明した。