米国内のキリスト教指導者らは、英国で生じた暴動の広まりを受けて、家族の結束や家庭内の道徳秩序を保つことは、単なる西欧社会の伝統ではなく、社会の安全のためにも大切なことであると指摘している。米クリスチャン・ポスト(CP)が報じた。
米福音派団体フォーカス・オン・ザ・ファミリーディレクターのグレン・スタントン氏は英国で生じた暴動の背景には家族の中での父親の役割欠如があるとし、「父親の存在がない家庭環境がこのような暴動を起こす環境を形成したといえます」と述べた。
家庭内の父親が責任を持って子どもを教え、親子の別をはっきりとさせる必要があり、息子が暴力的な行動を起こそうとするときにどのようにその行動を抑えることができるかを父親がしっかり教えなければならないという。スタントン氏は「もし父親が息子やその友人たちによる暴力行為を阻止できなければ、社会全体としてとても反社会的で危険な環境を生み出す土壌を形成してしまうことになります」と指摘した。
今月初めに生じた英国内の暴動では、10代から20代の若者らが市街地の店舗を破壊、放火して窃盗を行うなどの被害が生じた。英スカイニュース・ネットワークによると、暴動に参加した若者の多くは片親の家庭で育っていたり、将来への方向性を失っていたりする若者であるという。
今回の暴動に関して、ツイッターなどソーシャル・ネットワークツールが若者たちに暴動を促し、総額155億円もの経済損失と5人の死者を生じさせたとの非難も生じており、英国内では暴動や国家の緊急事態の際はソーシャルネットワークサイトを閉鎖すべきではないかとの議論も生じている。
一方英キャメロン首相はテレビ番組のインタビューで今回の暴動の責任は暴動に加わった若者とその両親にあるとし、「暴動の問題の原因は、完全な責任の欠如にあります。適切な両親による教育を受けておらず、しつけがなっておらず、倫理・道徳観が欠如していることに原因があります。私たちは状況を変えていかなくてはなりません」と述べた。
英福音主義キリスト教団体クリスチャン・インスティテュートのマイク・ジャッジ氏も「家族のあり方こそが今後英社会で変化させていかなければならない焦点である」とし、キャメロン首相の意見に同意している。ジャッジ氏は「一つの世代から次の世代に移行するにあたって、家族の価値観というものがきちんと受け継がれていないように思われます。隣人である人々を尊敬し、彼らの持ち物を奪ってはいけないと教えるのは子どもがまだ幼いうちにするべき家庭の両親の責任です」と述べた。ジャッジ氏は「家族」というものは母親と父親が共に互いのために献身し、さらに子供たちを育てるために献身しているべきものでなければならないと主張している。
米テネシー州ナッシュビルにあるワード・オブ・フェイス・クリスチャンセンター副牧師で「もし父親がいたら」という著書を執筆したフレディ・スコット氏は、「子どもたちは父親を見上げ、父親の中に人間としての模範的姿を見出し、的確なアドバイスを受けられること本能的に願っているものです。ですから父親が不在になると、子どもたちは空しさを感じるようになり、その空しさが原因で良くない感情を生み出してしまいます。もし父親のいない子どもが近くにいるのならば、そのような子どもは知らず知らずのうちに父親がいないことによる怒りの感情や葛藤する感情が生じてくるようになります。そのような感情が何か暴動のようなものが生じた際に、それに乗じるきっかけを引き起こしてしまうことになります」と指摘した。スコット氏はこのような暴動を未然に防ぐためにも、家庭を大事にし、家族の中で男性がより父親的な存在感、役割を果たしていくことが重要であると主張している。