中国家庭教会同盟副会長のシ・エンハオ牧師(55)が「不法な宗教的会議や、同会議開催のための不法な組織を結成した」ことを受け、中国政府から2年間の強制労働キャンプでの労働を言い渡された。25日、米クリスチャンポスト(CP)が報じた。
中国援助協会(CAA)によると、同氏の求刑は警官による裁判や刑事上の有罪判決を待たずして「法定外」に行われたものであるという。同牧師は江蘇省宿遷市警察によって、5月31日から12日間拘束されていた。その後6月21日には宿遷市公安当局によって犯罪者として拘留された。CAAによると、これは「まず間違いなく刑務所行きになる同国法的手続きの一過程である」という。
CAA代表のボブ・フー氏は米CPに対し、シ・エンハオ牧師の求刑に関して「想定していた迫害の範疇ではありましたが、彼がここまでひどい扱いを受けることになるとは思っていませんでした。彼の弁護士は彼との接触を禁じられており、中国政府の法律を完全に濫用しています。その意味で彼への労働キャンプ行きの求刑は衝撃的であり、中国家庭教会への迫害が最近になって激しくなってきたことを感じさせられています。おそらく中国家庭教会運動で主導的な役割を果たしてきたことから、彼は中国政府当局が末梢したいと考えている標的の一人なのでしょう」と述べた。
中国では信教の自由が認められており、ある程度まで宗教活動も行う権利が認められている。しかし宗教活動を行うには中国政府への登録が必要であり、政府公認の宗教団体の傘したで活動を行わなくてはならないことになっている。このような政府公認のキリスト教組織としては三自愛運動と中国教会協議会(CCC)が挙げられる。
よって中国政府によって登録を受けていない家庭教会にとっては、公に宗教活動を行うは違法と見なされる。しかし中国家庭教会は政府登録を受けていないに関わらず、急速度で発展していったため、地域政府の注目を避けるためより小さな組織へと分かれて活動するようになっていった。4月には北京守望教会は礼拝のために集まっていた建物を追い出されてから、公に野外礼拝を決行した。一方で多くの成長した中国家庭教会は政府の注目を避けるためより小さな組織に分裂する道を選択しているのが現実となっている。守望教会は注目を引く成長の仕方をしていったため、多くの政府当局によって拘束される人々が生じた。つい先日24日の主日礼拝だけでも同教会で捧げた礼拝で36名が中国政府に拘束されたという。
強制労働キャンプでの労働を求刑されたシ・エンハオ牧師の教会はすでに小教会に分化していたにもかかわらず、このような厳しい求刑が下されたことから、中国家庭教会への迫害の深刻さが改めて認識されるに至った。
ボブ・フー氏は「中国家庭教会に与える影響としては、信徒たちがひとりの説教者を失ったことで、さらに小さな組織に分化せざるを得なくなるでしょう。長期的に見れば、他の政府未登録の比較的大規模の家庭教会指導者らも今後厳しい迫害に直面せざるを得なくなってしまうことが考えられます」と懸念を表明した。
中国政府公安部はシ・エンハオ氏の牧する教会に集会を開くことを禁じ、同教会にある楽器や聖歌隊の衣装、教会専用車を押収し、また教会に納められていた献金14万元(約170万円)も没収したという。シ・エンハオ牧師には3人の娘がおり、娘たちの配偶者らも公安当局による脅しを受けているという。同牧師の妻と息子はフルタイムで宣教奉仕を行っており、同氏の家族は4代にわたって教会で奉仕してきた。
求刑が行われるまでは同牧師の家族は、同牧師と接触できたが、強制労働キャンプに収容されれば、一切接触できなくなる可能性があることが懸念されている。ボブ・フー氏は「中国政府法律に従えば、彼の家族は彼が強制労働キャンプに収容された後も接触が取れるべきですが、すでに中国政府当局は彼の弁護士を法を無視して彼と接触させないようにしています。このことから家族にとっては今もっとも難しい時期を迎えているといえるでしょう。私たちはこの件に対する世界的注目を集め、また彼の家族への経済的支援を募っていきたいと思っています」と述べている。