ノルウェーで22日生じた爆発・乱射事件首謀者としてノルウェー警察に拘束されているアンネシュ・ブライビーク容疑者(32)は自身が80人近くの人々を殺害し、数十人を負傷させたことを認めた。同容疑者は一部メディアでは「クリスチャン・テロリスト」として報道されているが、同容疑者自身は自身が宗教的な人間であることは否定している。米クリスチャン・ポスト(CP)が報じた。
CPによると、25日ノルウェー裁判所で、同容疑者は今回の多くの無実の人々の命を奪った殺傷事件において、「テロリスト」として求刑を課さないで欲しいと懇願したという。同容疑者は今回の殺傷事件は欧州を守るために必要不可欠なものであったと信じているという。
裁判官のキム・ヘーガー氏は、「裁判所では同容疑者は今回の爆発・乱射事件はノルウェーと西欧諸国がマルクス主義とイスラム教に乗っ取られようとしている最中で起こらざるを得ない事件であったと信じ、犯行を実行したと理解しています」と述べた。
同容疑者はインターネット上に1,500ページにも及ぶマニフェストを掲載し、マルクス主義とイスラム教がノルウェーと欧州諸国の脅威として迫っていることを主張していた。
マニフェストは英語で書かれており、犯行が行われる数時間前にインターネット上に掲載されたと見られている。同容疑者は今回の爆発・乱射事件の計画を数年間計画していたことも明らかにした。今回の事件によって同容疑者の公開したマニフェストが周知されることを期待していたという。
同容疑者のフェイスブックのページでは、自身をクリスチャンであると紹介していた。なおマニフェストでは中世ヨーロッパで活躍した騎士修道会の「テンプル騎士団」を崇拝している旨も書かれていた。同容疑者が歴史の一幕を進展させ、欧州をマルクス主義とイスラム教の影響から救うための革命を主導していきたいという希望も書かれていた。 同容疑者は「テンプル騎士団」を欧州の民族を保護し、欧州文化を虐殺から保護するための唯一の軍隊組織である」と見なしていることがマニフェストから伺えるという。
同容疑者は欧州のキリスト教文化を代表するかのような文言を用いているが、文書の内容は真実のキリスト教信仰の在り方とはほど遠いものとなっている。オンライン上に掲載されたマニフェストの1307ページ目には「イエス・キリストと神との個人的な関係をもてるならば、宗教的なキリスト教徒です。しかし私や私以外の多くの人々はイエス・キリストと神との個人的な関係を持つ必要はないのです。しかしながら私たちはキリスト教を文化的・社会的な位置づけで、アイデンティティの一部として、モラル・プラットフォームとして捉えているのです。このような認識によって私達はクリスチャンと呼ばれているのです」と書かれてある。
多くのメディアが同容疑者のことを「キリスト教原理主義者」とか「キリスト教右派」などと表現しているが、実際同容疑者の文書を読んでみるとキリスト教徒としての信仰自体は薄いことが伺える。
一方世界キリスト教共同体は、同容疑者の犯行を早急に非難するメッセージを発表し、正統なキリスト教ではこのような不道徳で凶悪な行為は決して行わない旨を明らかにしている。
世界福音同盟(WEA)国際関係ディレクターのゴードン・ショウエル-ロジャーズ氏は、今回の「キリスト教徒」と称する人物による犯行に衝撃を受けたことを証し、「ノルウェーはしっかりとしたキリスト教の歴史が存在しており、そのことがノルウェーにおいて平和をもたらしてきました。また同国キリスト教会は世界平和への国家的取り組みにも大きな貢献を成してきました。福音主義キリスト教徒である私達はこのような宗教的暴力行為を強く非難しています。そしてキリストの御名によってこのような暴力行為が行われたことに心を打たれています」との声明を発表した。
ノルウェーのキリスト教保守派団体も「キリスト教保守派として、私たちは22日の攻撃による犠牲者が生じたことに遺憾の意を表します。ブライビーク容疑者の信じていることは、キリスト教徒とも保守派ともかけ離れたものです」と声明を発表した。