同コースで開催されている講座において、多くの今日の社会に生きる人々が宗教を平和のために存在するものではなく、争いの根源にあるものとして認識してしまっていることが指摘されている。諸宗教コンサルテーションズ国際ユダヤ委員会のラビであるリチャード・マーカー氏は「私たち宗教指導者たちの手は清くはありません。そのためあまりに多くの国家と政府が、宗教を共通の価値観に対立する分裂の火種のように見なしてしまっています」と今日における宗教と平和に関する問題点を指摘した。
同大学による異宗教理解のための夏季コースは今年で5年目を迎えており、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の宗教背景を有する学生たちが共に宗教について学び、互いの神聖な空間や文化への影響、霊性や世界観などの分かち合いが行われている。
今学期の学生数は23名でうち14名が女性、9名が男性となっている。宗教別では10名がキリスト教徒、7名がイスラム教徒、6名がユダヤ教徒となっている。南米、東西ヨーロッパ、中東、アジアおよびオーストラリアと世界各地からスイスに集い、うち3名はイスラエルから、他の3名はパレスチナから来ているという。
犯罪学と国際政治学を専攻するイスラエルから来たダニャル・アンテビさんは、彼女の兄が考古学者で、イスラエルに関するプレゼンテーションを世界各地で行っており、異なる宗教間にある人々の関係性や多様な国々がイスラエルについてどのように思っているか関心を持っており、常に様々な国の人々と会う機会を模索している姿に影響を受けて今夏このコースに参加することを決めたという。ボセイでの一週間について彼女は「多様な文化を代表する人々と相互に対話することができる素晴らしい機会だと思います」と述べている。
スウェーデンの教会牧師からこのコースの話を聞いて参加したシャルロット・リンディさんは中学校卒業後、中国や東南アジア、中東などに好奇心旺盛にバックパッカーをしながら旅行を続けてきたという。 彼女は「異宗教の人々との関係性を通じて自分の信じる宗教についてより深く学ぶ事ができればと思っています。そして私が自分の教会で学んできたことと他の人たちが学んできたことを分かち合うことで、そこから得られた経験をスウェーデンに帰ったら地元の人々に伝える事ができればと思っています」と述べている。彼女は世界を旅する中で、イスラエルとパレスチナを訪れたときに異宗教間の活動に興味を持ち始め、宗教は互いに肩を並べあって存在してはいるが、まだ本当に共に協働し合っている姿は実現できていないと思うに至ったという。
オーストラリア出身でシリアのダマスカスでイスラム教の教えと異宗教間の対話に関する研究を行ってきたモハメド・アザリさんは、ボセイの夏期コースについて「異宗教の人々と出会える素晴らしい機会です。私たち自身の宗教のコミュニティを形成していくとともに、より偉大な出来事の達成のための第一段階に踏み出すことができればと思います。私たちは信仰や祈りによってどのように平和を得ることができるのでしょうか。互いの人間性を知ることができることで、互いに尊敬できるようになっていくでしょう。このような異宗教間の対話を通して、異宗教に対する寛容性を身につけていくことができるのではないでしょうか。互いに知ることが最善の方法であり、異宗教であるからといって互いを知ろうとしないことが争いの原因となっているのだと思います」と述べた。
ボセイ・エキュメニカル大学2011年夏季コースのアカデミック・コーディネータを務めるオデール・ペドロソ・マテウス教授は、このコースの開講について「世界がより平和に近い存在になっていくための難しい問題や解決の方法を対話によって模索していくことで、それぞれの文化的背景を持つコミュニティを励ましていき、摩擦を引き起こすのではなく新たな出会いを促進していく良い機会となるだろう」と述べている。
エキュメニカル大学には様々な宗教が規定する規定食や礼拝時間などに配慮しており、それぞれの宗教のための祈りの場所も設けている。同大学は1946年に世界教会協議会(WCC)の国際的な異宗教間の出会い・対話・関係構築の中心地となることを目指して設立された。