世界福音同盟(WEA)、世界教会協議会(WCC)およびカトリック教会の宗教間対話のための司教協議会(PCID)の世界三大キリスト教組織による「多宗教世界におけるキリストの証:信仰の実践のための提言」という5ページにわたる文書が28日、スイスジュネーブのエキュメニカルセンターで公表された。
この文書ではキリストの証をする宣教師や福音主義者らのふさわしい行動の在り方について提言されている。
正教会、カトリック、聖公会、プロテスタント、福音主義者、聖霊派その他独立教会らがこれら三大キリスト教組織に含まれており、この三組織によって世界キリスト教徒のほぼ90パーセントが代表されることになる。
WEA代表のジェフ・タニクリフ博士は「過去5年間にわたって私たちは新たなブリッジを構築してきました。この文書はその主要な成果といえます。この文書作成のために熱心に取り組んでくださったすべての方々の存在について、神様に感謝し、大変喜ばしく思います。WEAはこの文書を完全に是認するものとし、すべてのWEA会員・所属教会・機関がこの文書を学習していただけることをお勧めいたします」と述べた。
三大組織が共同で公表した文書では、多様なキリスト教共同体の中にあって、「クリスチャンの使命の核心」について公式な同意が書き記されており、三大組織に含まれる多様なキリスト教教会・組織が協働し、共に声を発していくことが促進されている。この点において、クリスチャンの一致を追求してきたキリスト教史上、今回の三大文書公表は16世紀以来の歴史的な出来事であるといえるという。
WCC総幹事のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト博士は「この文書を私たちそれぞれの加盟教会に、それぞれの教会の特色に合わせて行うべき適切な振る舞い方を指し示す提言書として見ていただく希望をもって送ります」と述べた。
共同文書は「伝道が教会のもっとも為すべき行いである」と伝道をする必要性が初めに書かれてあり、異なる信仰を持つ隣人たちに深い敬意を表しながらも、伝道に実践的に関わっていくキリスト者の在るべきあり方について書かれている。
PCID会長のタウラン枢機卿は諸教会指導者らの現状について「対話をしながらより偉大なビジョンを提言していくために信仰を宣べ伝える義務がある」とし、さらにカトリック教会では「それぞれの地域にあって真実で聖なるものを拒まない」という教えの原則があるように、もし異教徒らが真摯な方法で真実なる神を表現しようとしているのならば、キリスト者は異教徒との争いを克服しなければらないとも警告した。
「キリストの証」の共同文書では、伝道の問題や、すべての宗教的営みを行う人々と協力・信頼関係を構築し、相互の対話をしていくこと、そして全世界において信教の自由を促進していくことについての注意深い学習が呼びかけられている。
また文書では、キリスト者らはすべての人々の幸福のために祈り、宗教的アイデンティティを強め、他宗教者を誤解することのないように注意が呼びかけられている。また可能な限り、教会や関連組織の行動原則についてエキュメニカルな一致の上で決められ、また他宗教団体の代表者らとも相談することも勧められている。
トゥヴェイト総幹事は今回の文書を公表するにあたって、ヨハネ福音書17章のイエス・キリストの祈りから「世が信じるために私たちはひとつになるように呼ばれました。今日は感謝の日であり、祝福の日であり、またこれまでの反省をする日でもあります」と述べ、キリスト教諸教会一致のための祈りを捧げた。
WCC、PCIDおよびWEAの三大キリスト教組織による会合は2006年5月にイタリアラリアーノ開催された「多宗教世界におけるキリストの証」に関する会議、2007年8月のフランスツールーズでの会議、および2011年1月タイバンコクでの会議を経て完成に至った。