英国で2010年4月8日に英女王の裁可を受け同年10月1日に発効された「平等法」によって英国内キリスト教徒の信仰の自由が危ぶまれていることに関し、欧州人権裁判所が英政府に同法を明確化し、キリスト教徒の宗教者としての人権を守るように要求した。
平等法では、性別、人権、障害、性的志向、宗教または信条、年齢に関する現在の差別禁止律法を統合・再述し、必要に応じて単一の方法を採用することを努めている。
欧州人権裁判所裁判官らは、英政府に対し、キリスト教徒が十字架のアクセサリーを身につける権利を保護するのか、それとも信仰の表現の多様性を排除しようとしているのか、同国の法律を明確化すべきだと要求した。
英裁判所では、信仰に基づいたキリスト教徒の職場での振る舞いや十字架を身につけることが、他の信仰者に対する精神的な攻撃となるため、そのような職場での信仰の表現を禁止する判決が同法に基づいて度々出されている。欧州人権裁判所は、英政府に対し、同国のキリスト教徒に対する人権をどのように扱うのか明確にしなければならないと要求した。
欧州人権裁判所は、英国内の4人のキリスト教徒から、同国の同性愛者や少数派の宗教者への差別を防止するために昨年導入された平等法が、キリスト教徒を差別しているように感じるとの申し出を受け、英政府に要請するに至った。
英国ではブリティッシュ・エアウェイズのクリスチャン客室乗務員が、機内で十字架のネックレスをつけて勤務することを禁止されたり、同性愛者の結婚式の挙行する申し出を断った英国政府職員が懲戒処分を受けたり、恋愛相談を受けるカウンセラーが、同性愛カップルの相談を受けるのを断ったことで解雇されたり、看護婦が院内では十字架のネックレスを外すという職務命令を拒否したために休職に追い込まれるなどの事態が生じている。
これら4人の英キリスト教徒らは、英裁判所内で訴えを却下されたため、欧州人権裁判所に申し出るに至った。そのうち2人は、キリスト教法律センター(CLC)によってサポートされている。CLC創設者兼ディレクターのアンドレア・ウィリアムズ氏はこれらの件について「とても重要な問題です。キリスト教徒の信仰に対する敵意が見られます。英裁判所でのこれらの判決が続くことで、英国内に深い不正を生み出すことになるでしょう。欧州人権裁判所で正しい判決がなされることで、英平等法が撤廃されるか、再度見直され、英国内のキリスト教徒らが彼らの良心に従って自由に勤務できるようになることを願っています。多様な価値観を持つ人々の平等性・多様性を受け入れられないために、恋愛や結婚は異性同士の間でなされるべきであるという正統な価値観を持つ人々が職場から追いやられるようなことがあってはなりません」と述べている。
欧州人権裁判所は英政府からの返答の後、公聴会を開催すべきか否かを決断する予定であるという。