【CJC=東京】カトリック教会は深刻な末期症状にあり、正直な診断と根本的な治療が必要だ、とカトリック神学者ハンス・キュンク氏が5月2日、ミュンヘンの『リテラトゥールハウス』で行われた、自著『教会はまだ救えるか』を紹介する講演の中で語った。世界教会協議会系のENIニュースが報じた。
キュンク氏は、最も率直に発言するカトリック神学者の1人。現教皇ベネディクト16世とは、かつてチュービンゲン大学で共に教えていた経緯がある。1971年、教皇の不謬性を問題にしたことで、カトリック神学を講じる資格「ミッシオ・カノニカ」を剥奪され、それ以後はチュービンゲン大学のエキュメニカル神学の教授になった。
キュンク氏は、教会の病気は最近の性的虐待スキャンダルに留まるものではない、と言う。
米国のカトリック教会は会員の3分の1を失ったとして「アメリカのカトリック教会は、理由を追求して来なかった。どこの組織であれ、会員の3分の1を失ったら、その理由を知りたいと思うだろう」と言い、さらにドイツの司教の8割が改革を歓迎している、と語った。
講演会場は、かつて教皇ベネディクト16世が司教をしていたミュンヘン・フライシング教区にある。ほとんどが高齢の聴衆に向かって、キュンク氏は「この本を書きたくはなかった。今も『わたしの教会』である教会に、批判的な出版物を献じるのは楽しいことではない」として、ミサ執行の際にラテン語ではなく現地語を使うといった、様々な方法で60年代初期に教会を改革した第2バチカン公会議の精神に示された道を、教皇が進むよう希望する、と語った。
しかし教皇ベネディクト16世は、第2バチカン公会議とは距離を置き、「世界規模に広がった聖職者による性的虐待と対決できなかった。教皇は、本質的には中世の典礼、神学、教会規則に叶った人物」と言う。
性的虐待問題が表面化してから再燃してきた独身論議に関して、キュンク氏は「ローマ・カトリック教会は最初の1000年間、独身制なしで存在し続けてきた」として、司祭・司教に結婚を認めることに強く賛成している。
キュンク氏はもう一度、「教会はまだ救えるか」と問いかけ、数百万人ものキリスト者の期待に応えようとする教会のビジョンを捨ててはいないが、いくつかの条件が満たされなければならない、と語った。
改革に当たっては、キリスト教的急進論、普遍性と一貫性が必要だとして、「希望をあきらめることはなかったし、これからも希望を持ち続ける」と言う。