キリスト教教育を通して子供たちの健全な成長と訓練を目指すチャーチスクーリングやホームスクーリングが、日本のキリスト教界で活気づいている。「教育の主権は親の下に」「教会は教育の基礎」という理念が、学校教育に対して不信感を募らせる保護者や教育関係者から確かな信頼を得ている。
東京バイブルチャーチ(東京・江戸川区)が運営する「ガッズキングダム・クリスチャンスクール」は今年8月30-31日の両日、教育関係者向けの訓練セミナーを開く。児童心理やキリスト教教育の概念などについて学ぶ昨年のセミナーが盛況だったため、昨年と同じ講師を招き、講演や分科会、子供向けプログラムを行う。
セミナー講師は豪クリスチャン・ヘリテージ・カレッジのロバート・ハーシェル博士(教育学)。分科会では、同スクール教師陣がパネラーとして参加し、教育現場で感じる疑問や児童・生徒の生活指導について学校教師にアドバイスをする。子供向けプログラムでは、3歳から高校生までを対象に、同スクールの体験授業を提供する。詳細は同スクールまで(電話03-3656-7859)。
家庭の大切さを主張する「ファミリーネットワーク」(尾山謙仁代表、埼玉県入間市)は、国際的なネットワークを生かし、セミナーや教材を通じて活動している。家庭崩壊の深刻化を案じて2000年3月設立。クリスチャンの両親を持つ子供が信仰から離れる現実、表面的には教会に通う一方で家庭内離婚や信仰の悩み、人間関係などさまざまな問題を抱えるクリスチャンが教会に多く存在する現状を打破しようと活動に乗り出した。
尾山代表は「クリスチャンの家庭崩壊、牧師夫妻の離婚も珍しくない。たとえ教会が数的に成長し、教会堂が建設されても、それが神のご意志なのかを問い直す必要がある」と話す。社会問題や世俗の価値観が教会内にも及んでいる事実を受け止めて福音を再考することを呼び掛けていくという。
同ネットワークは主に海外の優れた著書の国内出版、米国のクリスチャンホームへのホームステイ斡旋、国内セミナーや海外セミナーへのツアーを行っている。米アリゾナ州の専門施設を利用した摂食障害者向けプログラム、カリフォルニア州サドルバック教会へのツアーが好評だ。詳細は事務局まで(電話042-962-4012)。
チャーチスクーリング、ホームスクーリング従事者のための「ホームスクーリング祈祷会」を主催する吉井春人牧師(日本長老教会東京中会日野バイブルチャーチ)は、「教育は本来、教会がするべきもの。親が主体となるホームスクーリングを出発点として、子供たちをキリストの弟子に育てたい」と話す。吉井師自身、3人の実子をホームスクーリングで育てた。
吉井師は、教会に熱心に通う子供たちが中学・高校と進み、大学を出るまでに、信仰を失って教会から離れていってしまう状況に心を痛めた。日本のクリスチャンにとって学校生活と信仰生活を結びつけることは容易ではない。教会員に対して社会的評価の高さを案に期待する教会、子供に対して「信仰の証し」として学校の成績や高い社会的地位を求めるクリスチャンの存在も問い直すべき課題だ。子供たちの信仰を守るために、ホームスクーリングの必要性を感じるクリスチャンは少なくないという。
歴史の中で教育は、神を知るための学びとして誕生し、社会に浸透した。だが、神の創造の豊かさや人間の存在価値を学ぶために生まれた文学や自然科学がやがて神を離れ、時代とともに神を否定するようになるという皮肉な結果となった。米ハーバード大など世界的な教育機関の多くが聖職者の養成機関として誕生し、やがて無宗教的な教育機関として独立していったことは既成の事実だ。倫理や教育論をめぐって混乱が生じている世界の教育現場で、聖書への原点回帰を訴える小さな胎動がこうして日本でも始まっている。