日本ウィクリフ聖書翻訳協会(東京都杉並区)が30日に行った公開研修会では、豪ウィクリフ聖書翻訳協会総主事のカーク・フランクリン氏がキリスト教団体の運営方法について講演した。この研修会は、委員会、理事会等で団体運営に携わる指導者層を対象に昨年開始された訓練集会で、第一回は昨年10月にパプア・ニューギニアで実施された。
同氏は、理事の働きは?ビジョン(Vision)、?使命(Mission)、?到達目標(End Results)--を明確にすることが不可欠と語った。ビジョンは、到達が不可能とされる要素を含み動機付けをする内容で、団体の理想像の大図であるため必ずしも具体性は含まないという。使命については、団体の役割と目標。人々にどのような働きを覚えてもらいたいかということを繰り返し点検することが大切と語った。
到達目標には「奉仕の対象者」「期待される結果」「到達に必要なコスト」を含み、理事会は目標達成までの時間配分と進行状況の観察(モニター)に従事して目標達成の責任を負う立場にある。国際ウィクリフ聖書翻訳協会は「聖書の全言語翻訳を通して全世界の教会と結びつく」ことを到達目標とし、このためにアジア太平洋州ウィクリフ聖書翻訳協会は制限時間を含む目標を設置し、アジア諸国のウィクリフ聖書翻訳協会は、アジアの目標達成に向けて各国でさらに具体的な目標を設定する。日本ウィクリフは、2025年までに100人の奉仕者を獲得するとし、このために05年から07年の間に祈祷グループを10団体設置する等の目標を持っている。
フランクリン氏は、教会などキリスト教団体の理事会の機能として?方向付け、?活動の観察と評価、?説明責任(アカウンタビリティ)--を挙げ、これら3要素は、株主を念頭において利益を追い求める一般企業とは異なると強調した。理事会は団体の方針を神の導きを信じる信仰によって定める必要がある。説明責任については、豪ウィクリフは、豪政府、豪福音同盟、諸教会に対して、日本ウィクリフは、教会、会員等に対して、また、すべてのキリスト教団体は、神に対して責任を負っていると話した。教会員は理事会の健全が保たれるように祈ることが大切と指摘した。
団体が円熟すると、怠慢から理事会を休会したり、総主事が提案することが自動的に承認されて独裁的になったりして、やがて経済危機や理事間の有効性の欠如といった事態も起こり得る。これを回避する役割は理事会と一般会員にあるという。一般会員は理事会の働きを監視し、理事会は総主事が規定範囲内で目標設定と奉仕をどのように実施してきたかを監視し評価する必要がある。このため理事会は、総主事の評価基準の設定のほか、総主事を霊的に支援する励ましと祈りが大切と述べた。
フランクリン氏は「(理事会は)神様がいま何をなさっていて、何を語りかけているのかを見ながら奉仕することが必要。将来を目指すには信仰が必要となる。現在や過去だけを見ていくのとは大きく異なる」と述べ、団体指導層は会員、教会、他団体、神を代表して役を任されているという認識を共有する必要があると指摘した。
1954年に設立された豪ウィクリフは、5年前から運営体制の改革のための研究を開始した。理事会の機能、団体と理事会の関係等について再検討し、2025年までに全ての言語で聖書翻訳プロジェクトがスタートしていることを目指す「ビジョン2025」の一環として取り組む。
フランクリン氏は、母教会長老、豪ウィクリフ理事、豪福音同盟の宣教委員、国際ウィクリフ理事を歴任。アジア大洋州ウィクリフ総主事の福田崇氏とのつながりもあり、豪ウィクリフの研究から学びたいとの日本側の要望を受けて来日講演した。
同氏は講演後、「日本ウィクリフと豪ウィクリフは互いに尊敬し合っている。文化こそ異なるが、互いから学び取るべきことがたくさんある。」と話し、「総会では活発さとあわせて冷静さもあった。意見交換を通して互いに仕えあい、日本がさらに大きな働きをするようになると信じる」とコメントした。