戦争下のバグダッドに昨年三月「人間の盾」として滞在し、その後もバグダッド再訪や講演を通して平和への祈りと実践に取り組む木村公一牧師(福岡国際キリスト教会、バプ連盟)は25日、東京都渋谷区の美竹教会(日本基督教団)で「パクス・アメリカーナとキリストの平和」と題して講演した。自身のインドネシア宣教やイラク訪問の体験談を交えて神学を実践に結びつける必要性を強調、教会は他の宗教家と協力して平和奉仕に取り組むべきと訴えた。
宣教師として2002年まで17年間インドネシアに在住した木村牧師は、99年スハルト政権崩壊後の混乱の中で発生したキリスト教会同時爆弾テロに触れ、キリスト教会が政府の武力に頼るという対応策を採ったことに批判的な姿勢を示してきた、と話した。暴力に暴力で対抗しようとする教会について「(福音の)基本的な教えがなぜ、教会に根付かないのか」と述べ、アジアだけでなく全世界の教会は神学を実践に結び付けられないと指摘した。
パクス・アメリカーナを神学が政治経済や消費社会の世俗的な考えと混じってしまった宗教混合主義(状態)と定義、これが人間の基本イデオロギーとして精神の根底に存在しており、米国、特に南部の教会にその現象が顕著だとした。木村牧師は話の中で「キリスト教徒の罪はキリスト教徒によって購われるべき」という考えがイラク訪問の直接の動機だったことを明らかにした。
木村牧師は、イラクで米国の軍事力を知ったと話す一方、神の国の権勢はこれを上回ると強調し、バグダッド再訪は聖霊による派遣であったと語った。
木村牧師は、「教会の牧師は、本当に神の国のリアリティを感じているのか」と問い掛け、神の国に対する感覚の希薄な教会の行方を案じた。また、内的力(信仰、平和を求める力)は外的、客観的環境によって方向付けられ強められると説明し、内的平和と外的平和の論理を切り離すことは出来ないと話した。