東京女子大の湊晶子学長は先月28日、青山学院大で開かれたキリスト教学校教育懇談会第一回公開講演会で講演し、女子教育が20世紀にキリスト教精神を基盤としたリベラルアーツ教育を通じて女性の人格教育と社会進出を助けてきた点を評価しながら、「個」の確立が困難な現代学校教育における女子教育の存在意義は大きいと語った。
湊氏は、神は人間を創造した際、男女とも神の姿に似せて創り、差別なく尊い存在として愛したことに言及し、神への垂直的な信仰を通じて神の前に平等であるすべての人類が「人格」と「責任」を正しく形成し、また埋没した「個」の再発見に至るのだと訴えた。
5代目クリスチャンとして旧憲法の時代を生きた幼少期、湊氏は多くの迫害と苦難を経験してきたという。第二次大戦を経験した湊氏が紀元1−3世紀の迫害史を専門とするのも、迫害を受けた初代教会の信徒らへの共感が少なくないはずだ。湊氏は、女性の社会的地位が極めて低く扱われていた時代を振り返り、日本でナショナリズムの再来を防ぎながら女性の社会進出を目指して努力してきたと語った。
共学志向の今日、女子教育の重要性を感じる理由のひとつとして、湊氏は日本の女子教育の創世時代から深く関わってきたキリスト教精神を挙げた。若い日にキリスト教教育を学び、神の愛や犠牲、奉仕に加え、創世記4章7節「お前はそれを支配せねばならない」との出会いが、自分の命と罪について深く考える機会になったという。また、女性教育機関に受け継がれてきたリベラルアーツの思想は、新渡戸稲造による学問の定義「心を自由にし、開放すること」と合致するとした上で、「自分の目標や可能性に出会う教育は、キリスト教主義教育で行われてきた」と強調した。
「数多くの女性リーダーを育成して社会に送り出してきた女性教育機関で学ぶことで、自分のモデルとなる女性リーダーとの出会いを通じた自己の再定義が期待される」と語る湊氏。現代はジェンダー論が盛んだが、湊氏は、これを女性による女性だけの女性論として捕らえず、「社会によって形成された男性性と女性性」であると認識して直視することが必要であり、そのような視点を持ち神の被造物たる「個」を求める女性を育てたい、と締めくくった。