75歳以上のお年寄りがいのちの尊さを再認識し、健やかな心を育てていこうと、聖路加国際病院理事長の日野原重明氏が始めた「新老人の会」(日野原重明会長)が今、全国的な反響を呼んでいる。
昨年一般紙が報道したこともあり、日野原氏がそれまで一年半以上も前から温めてきた「新老人運動」が今、大きな広がりを見せている。「新老人の会」はすでに全国に16の支部を設置、全国で1000人を超える人々が会費を納入している。
新老人運動は、次の5つの目標を掲げて活動を進めている。?本会会員は75歳以上の自立した老人で、老後の生き方を自ら勇気をもって選択し、過去のよき文化や習慣をそれぞれの家庭や社会に伝達し、次の時代をより健やかにする役割を担う。?20世紀の負の遺産である戦争を通じて貧しさの中から学んだ体験と、人類愛を忘れた生き方の反省から得られた教訓を、次の世代に伝える。?自らの健康情報(身体的・精神的及び習慣的な情報)をヘルス・リサーチ・ボランティアとなって研究団体に提供し、老年医学、医療の発展に寄与する。?健やかな第三の人生を感謝して生きる人々が、更に新しい自己実現を期して交流し合い、心豊かな老年を過ごす。?過度に成長した不健全な文明に歯止めをかけ、与えられた自然の恩恵の中に生きる喜びを体験し、できるだけ高い教養を身につけ、よき生活習慣の普及を図る。
「新老人の会」では、日野原会長のもと、会の目標に向けて様々な活動を展開している。まず、「第二次世界大戦前後の数十年間、極度の飢餓や戦争の悲惨さを実体験した75歳以上の老人こそ体験を口伝えに伝承する使命がある」と訴え、平和実現のために会員の「戦争体験記(私たちの遺書)」を発行。小学校などに訪問して、未来を担う子どもたちに「いのち」の大切さを直接語り継ぐ運動をしている。また人々の健全な生活を守るために、ヘルス・リサーチ・ボランティアでは健康情報を提供。さらにはそれぞれが培ってきた得意分野を生かし、音楽会、コーラス、ダンスなど様々な活動で会員の交流を図っている。
「私たちは、どのように齢を重ねていくかということをもっと真剣に考えなければならないと思います。齢を重ねるについて体は痛み、記憶力は衰え、体力も減退していくことでしょう。しかし、心を満たすスピリット(魂)は、いまを生かされているという感謝と共に、ますます磨かれていかなければなりません。土の器である肉体は滅んでも、私たちの魂は次の世代に受け継がれ、よりよい未来のために役立てられることを希います」と1911年生まれの日野原会長は、現代を生きる我々に語りかける。
「新老人の会」入会の問い合わせは、ライフ・プランニングセンター「新老人の会」係り(電話:03・3265・1907、FAX:03・3265・1909)まで。なお、75歳未満のジュニア会員の入会も歓迎している。「新老人の会」ホームページ(http://www.lpc.or.jp/nec/framepage9.htm)。