10月8日のパキスタン地震被災地で活動する国際人道援助団体「ワールド・ビジョン」(本部・米国、以下WV)が、救援物資の輸送に焦りを募らせている。被災地では山岳地帯を中心に11月中に積雪を記録し、最低気温がマイナス10度を下回るところもある。ただ冬用テントが不足しており、WVによると、路上や倒壊した家屋で風雨にさらされ生活する被災者は最低300万人、山岳地帯で救助の行き届かない地域の住民は15万人いるとみられる。
厳しい環境の中で最も懸念されるのは乳幼児を含む子どもたちだ。特定非営利活動法人「ワールド・ビジョン・ジャパン」(新宿区)によると、地震による被害の大きい地域で感染系の肺炎が流行し、気温の低下が厳しくなる11月中旬で既に約1万人の子どもが重度の肺炎にかかった。下痢や赤痢、破傷風にかかった子どもは7千人以上に上り、数十人が命を落としたという。
パキスタン地震の援助金で国際社会はこれまで60億ドル以上の供与を約束しているが、大部分は建設やライフラインの整備など長期計画などに充てられる。国連によると、半年間の救援活動資金として5億5500万ドルを必要としているが、12月10日現在、一部しか集まっていない。
共同通信によると、国連のエグランド事務次長(人道問題担当)は、スマトラ沖地震の津波やパキスタン地震の被災地支援に追われたこの1年を「前例のない災害に見舞われた大変な年」と回顧。国連への拠出金削減を求めている日本に対し、災害援助分野で一層の支援をするよう求めた。
事務次長は、「国連の人道支援の有効性については、日本の人々は疑念を抱いていないと感じている」と述べ、大口拠出国としての日本の責任に期待感を示した。