立教大(東京・池袋)平和・コミュニティ研究機構(宮島喬代表、以下RIPCS)主催の講演会で、25日、タイ最大のクロントイ・スラムで子どもたちの教育やスラム住民の生活向上のために活動するプラティープさんが講演した。学内外から約230人が参加した。
プラティープさんは1952年にタイ・バンコクのクロントイで生まれた。若い頃に「1バーツ学校」という小さな学習施設を開いてスラムの子どもたちのために教育の場を設けた。明日への望みも持つことができないスラムで、子どもたちに夢と希望を与え続けたプラティープさんはいつしか「スラムの天使」と呼ばれるように。
功績が認められ「アジアのノーベル賞」といわれるマグサイサイ賞を受賞すると、これを機にドゥアン・プラティープ財団を設立。2000年にはタイ国の上院議員に当選し、現在は国政レベルでスラム問題に取り組んでいる。
「パーツ」とはタイの通貨で当時の価値は現在の約10円。プラティープさんは毎日親から1バーツをもらって授業を教えていた。現在、この1バーツ学校はバンコクの公立学校として認められ、クロントイの多くの子どもたちが毎日学んでいる。
プラティープ財団は幼稚教育以外に、スラムに住む難聴などの障害を持つ子の教育を行っている。
タイには、スラム、エイズ、山岳少数民族、森林破壊などさまざまな社会問題が存在する。これらに取り組む支援団体も多いが、慢性的な資金不足で大規模な活動が困難なのが現状だ。
プラティープさんはこれまでの活動の軌跡を語りながら、現在のスラムやNGO活動の課題を説明した。
RIPCSは、平和実現の条件を独自の視点から研究するという目的で2004年4月に開設された。平等、公正、開かれた多層コミュニティの形成を追及するために、同大の全学的な協力や、学外や海外の研究者との連係の下、学際的な共同研究を展開している。