全世界に約30万人いるといわれる「子ども兵士」(18歳未満の戦闘員)の問題を一人でも多くの人に知ってもらおうと、アムネスティ・インターナショナル日本財団(搆美佳理事長、以下アムネスティ)が19日、元子ども兵士による「全国スピーキングツアー2005」を立教大(東京都豊島区)で開催した。約160人が参加した。
バンヤさん(仮称)はミャンマー(ビルマ)で13歳から17歳までを子ども兵士として過ごした。子ども兵士は戦場で大人と同じ労務を課せられ、キャンプでは一般の兵士から奴隷のように扱われているという。成人兵士と同様、数十キロもある荷物を肩に背負い、大人と同じペースで歩かなければならない。「疲れた」とはいえない。上官の命令に従わない子ども兵士は見せしめに拷問を受けて殺された。
推定40万人とされるミャンマー国軍兵士のうち約4割が12歳から18歳の子どもとみられている。国軍と対立する民族武装集団にも現在約7000人の子どもが従軍しているという。
彼らの中には、敵への憎しみや民族愛で自ら志願する子どももいるが、経済的な理由から兵士となる以外に選択肢がなかったり、誘拐や親への拷問などで強制的に入隊させられたりする子どもも多いという。戦場の劣悪な環境の中で過酷な強制労働を強いられ、虐待、地雷、皮膚病、性病などの危険に常にさらされている。
政府は人権諸条約に批准しているが、紛争地域のモニタリングを拒絶したり、社会事業活動やその活動区域を極端に制限したりするなど、子ども兵士の現状を改善しようとする動きはほとんど見られないという。
現在、バンヤさんはHREIB(ビルマ人権教育機関)のスタッフとして、子ども兵士廃絶のための活動や国内の人権教育を行っている。
ウガンダ出身のチャイナ・ケイテッツィさんは8歳で国民抵抗軍の兵士となり、上官や不特定多数の兵士から性的虐待を受けた。14歳で出産を経験し、従軍中に2人を出産、1人を身ごもった。中には父親を特定できない子どももいるという。虐待による精神的ダメージは、脱走から10年たった今もチャイナさんを苦しめている。
幸いにもチャイナさんは、逃亡先のデンマークで政府から一人の臨床心理士と二人のソーシャルワーカーが与えられ、奇跡的に社会復帰を果たした。しかし、このようなケアの体制はまだ十分には整っておらず、今なお多くの元子ども兵士が精神的、社会的ケアを必要としている。
チャイナさんは現在、子ども兵士の廃絶活動を行う団体「X Child」の代表として講演や執筆活動を行っている。
チャイナさんは「子ども兵士はとても深刻な問題」「今も現地で虐待されている子ども兵士の存在を忘れないでほしい」と聴衆に呼びかけた。
参加者は「子ども兵士の現状を聞いてとてもショックだった」「自分がどれだけ幸せな環境に生きていたのかがわかった」と感想を話していた。
このスピーキングツアーは今月5日から来月4日までの日程で、全国14か所で公演が予定されている。講演の日程に関する詳細はアムネスティのホームページhttp://www.amnesty.or.jp/で。