虐待や差別的言動など人権侵害からの救済を標榜する鳥取県の人権救済条例案が12日、同県議会で賛成多数で可決された。都道府県が人権被害からの救済で独自に条例を制定するのは初めて。
同条例は人権侵害の救済と予防が目的とされている。「人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病、性的指向」を理由として行う差別的言動、虐待、性的言動、中傷などを人権侵害と定義している。
幅広い人権侵害を救済できると評価される一方、同県弁護士会などは「基本的人権の面から憲法違反の恐れもある」「重大な欠陥が多く、法定手続きや表現の自由を保障した憲法に違反する恐れがある」として条例反対の声明を発表した。信仰に基づくキリスト教主義的発言、思想、倫理意識などに矛先が向けられるケースも出てくるのではとの懸念も残る。
一方、15日付の地方紙によれば、14日正午までに700件を超える抗議のメールやファクスが同県や県内各地へ寄せられた。県内で過去2番目に多い件数という。報道によると、寄せられた意見のうち「人権啓発活動に役立つ」など賛成意見は5件。「公権力による人権侵害法案」「言論弾圧につながる」「過料や氏名公表は、けしからん」など抗議や疑問の声がほとんどだ。
同条例は、県議三十八人のうち三十五人が合同提案した。可決により、来年6月に施行される。
読売新聞に対し、議会終了後、片山善博知事は「(県民や県弁護士会などからの)懸念は、運用の段階で払拭(ふっしょく)していかなければいけないし、運用で疑義があれば、躊躇(ちゅうちょ)せず、条例の見直しを提案していく」と話した。
県人権局は14日、ホームページに救済制度の概要や条例全文などを掲載した。今後、県民向けのパンフレット作成などの啓発事業を開始する。