カナダ下院は28日(現地時間)、同性同士の結婚を認める法案を賛成158、反対133で可決した。福音主義キリスト教会や保守派政党は、結婚の伝統的価値観や信教の自由を守るため法案に反発していた。成立すればカナダは、ベルギーとオランダに続き、同性結婚を合法化した世界で3番目の国となる。
ロイター通信によると、成立には上院での可決が必要だが、上院は法案を提出した自由党が多数を占めているため、法案成立は確実視されている。AP通信英語版によると、法案は7月下旬にも成立する見通し。
自由党党首のマーティン首相は「カナダは少数派が集まってできた国。少数派の国にあっては、権利をえり好みしないことが大事だ。権利は権利だ」と述べ、全国民の権利保障を強調した。
カナダ政府の統計によると、同国には3万4000組の同性愛カップルが存在するという。
法案に反対するキリスト教関係団体らは、法が同性結婚の権利を認めれば、子供から父母を持つ権利を奪うことになると指摘している。
米紙『クリスチャンポスト』の取材に対し、カナダ福音同盟(EFC)理事長、ブルース・クレメンガー牧師は、「政府は憲法から『夫』と『妻』という単語を抹消しようとしている。子供が父と母を知る権利、子供が父と母に養育される権利が奪われてしまう」と危機感を示した。
ローマ・カトリック教会も、同性結婚の合法化は子供に害を及ぼす可能性があるとしている。
キリスト教団体指導者の間には、法案成立後、信教の自由に基づいて聖書的結婚に言及できなくなると指摘する声もある。EFCの法律・政調担当、ジャネット・エップ・バッキンガム牧師は、「結婚の定義が変わることで、宗教的発言が規制される恐れがある」「本来、結婚は宗教的な市民制度。この先、葛藤が生じることは避けられないだろう」と話す。
クレメンガー師は、「福音主義教会は、結婚が神からの祝福であり、男女間のみに許されるという信仰を固く守り続けてきた。国民の間には、教会の結婚観は政府や権利憲章に反するという認識が広まるだろう」と分析する。
カナダ国内10州のうち8州で裁判所が、同性結婚の禁止はカナダ権利憲章に違反しているとしている。