イラク西部で武装グループに拘束されたとみられる斎藤昭彦さん(44)の弟で会社員の博信さん(34)が10日夕、千葉市の実家に近い公民館で記者会見した。「兄は120パーセント、誰よりも危険性を知っていたと思う」と割り切れなさをにじませながら「けがをしているということなので、まず手当てをしてあげてほしい」と武装勢力側に訴えた。
会見には博信さん1人が出席。おえつで言葉が詰まり、着ていたパーカで涙をぬぐいながら心境を語った。
「日本国民の皆様にご心配、迷惑をお掛けしました」と深々と一礼。外務省から午後3時ごろに「新たな進展、情報はない」と連絡があったことを明らかにした。武装勢力に対しては、ややためらいがちに「その行為はイラクのためになるのか」と話した。
博信さんによると、昭彦さんは地元高校を中退後、陸上自衛隊に入り、任期満了で2年後除隊。しばらくアルバイトを転々とした末、連絡が途絶えたという。博信さんがブラジルにサッカー留学をした90年か91年ごろ、昭彦さんから「おれもブラジルにいてエンジニアをやっている。会おうか」と連絡があったが、その時は都合で再会できなかった。最後に会ったのは昭彦さんが8〜10年前に実家に戻って来たとき。実家で「いろんな国に行って、いろんな人に会った」と語ったという。
2003年の夏ごろ、ワインやチョコレートが突然実家に届いた。送り主の名前はなく、手紙も添えられていなかったという。その年の11月に母親が亡くなり、博信さんは「(兄が母親の)最期を悟ったのか、と思った」と振り返った。
政府に望むことを聞かれた博信さんは「イラク政策を変えることなく、揺らぐこともなく、兄の件とは別に主体的に(自衛隊が)イラクにいるべきかどうかを考えてほしい。いるべきだと思うなら、日本政府を支持します」と語った。
一方で、「無事に帰って来られるならば、どんな気持ちで現地に行き、その職業に就いたのか、みなさんが納得するまで説明しろと言いたい」と話した。(共同)