政府が国会への再提出を予定している人権擁護法案に関して、日本新聞協会と日本民間放送連盟は16日、「共同声明」を発表し、同法案に含まれる“メディア規制条項”を削除すべきとの考えをあらためて明らかにした。共同声明の全文は次の通り。
日本新聞協会、日本民間放送連盟は、政府が国会への提出を準備している人権擁護法案に対し、見解を表明する。
政府は一昨年廃案になった人権擁護法案を一部修正の上、今国会に提出することを準備している。われわれは旧法案に対し、「報道による人権侵害」を「差別」「虐待」と同列に並べ「特別救済」の対象としたことは極めて遺憾であり、いわゆる「過剰な取材」を名目に政府による報道への不当な干渉につながりかねないと主張してきた。こうした批判は報道機関だけでなく国民の間からも強く、結局廃案になった経緯がある。
政府が提出を準備している法案ではこのメディア規制条項を「凍結」している。しかし、「凍結」では、立法措置を経るとはいえ、いつでも解除が可能であり、メディア規制の本質は何ら変わっていない。われわれは到底容認できず、この条項を断固削除すべきと考えている。
取材や報道にかかわる問題について、われわれは自主的な取り組みを続けている。日本新聞協会、日本民間放送連盟は、集団的過熱取材に対応する制度を設けたほか、新聞・通信各社は社内に第三者機関を作るなどして取材や報道の問題を検証している。また放送各社もBRC(放送と人権等権利に関する委員会)で人権救済の勧告・公表を行うなど各報道機関は自主的な努力をしている。民主主義の根幹をなす国民の「知る権利」は自由で独立したメディアが存在してはじめて保障される。
人権擁護法案の国会への提出および審議にあたっては、報道の自由に十分配慮した制度がつくられることを改めて強く求める。