中国政府による「宗教事務条例」が1日発効した。この条例では、合法的な宗教活動や宗教団体、宗教活動場所や信徒の権益を保護するとしている。中国の国家宗教事務局では、この条例の狙いとして、中国共産党の信仰宗教の自由という政策を貫徹して、合法的な宗教事務の管理、宗教と社会主義との調和を図ることなどを挙げている(中国新聞社)。共産主義圏で信教の自由が保護されると評される一方で、当局から認可を得られない教会や活動に対する迫害が強化されるとの懸念の声も上がっている。
条例は、宗教に関する手続きや制限、責任範囲等について詳細に明記している。在米中国人キリスト教信徒向けの新聞、福音新報(1日付、サン・フランシスコ)によれば、団体の宗教法人化の申請方法、献金規定、外国人が滞在する場合、事前報告の義務付けや滞在中の行動規定など多岐に及ぶ。
ロイター通信などによると、昨年12月19日付の共産党機関紙、人民日報は、「中国では1億人以上が宗教を信じていることから、国民の利益を守り人権を尊重・擁護する上で、信仰の自由を保障することが重要だ」とする論評を掲載した。また、中国共産党は、文化大革命の際に宗教関係者を迫害したことは誤りだった、と認め、政府は宗教活動に介入しない、との立場を示した(同)。
中国ではこれまで、宗教の集会は政府が定めた教会、寺院、集会所で行うことが義務付けられていた。信教の自由に関する国際レポート(2004年)は、中国政府について、政府と共産党の統制力が及ばない団体が宗教組織の中から出ることを阻止する目的で規制と監視を行っていると報告する。政府が宗教の抹殺から宗教の管理へと方針を移行したとの指摘もある。
「条例が国内の宗教法にどのような影響を及ぼすかについては不透明な部分が多い」と慎重な見方が多い中、海外のキリスト教関係者は「宗教団体に登録を義務付ける今回の条例は、条例施行以前の宗教法を一層強化したものになるのでは」(米・キリスト教人権団体幹部)とみている。