イラクの復興と国内キリスト教徒の将来を左右する国民議会選挙の投票が30日、イラク全土で実施された。教会を標的とした爆弾テロなどの迫害から逃れるため、国内70万人とされるキリスト教徒のうち5万人近くが国外避難を余儀なくされたが、宣教団体「オープンドアーズ」など世界のキリスト教諸団体は「クリスチャンの声がイラクの国政に反映される初の機会」などとして自由選挙の実施を高く評価した。
会長のカール・モーラー氏は世界のキリスト教徒に対し、「爆弾テロと圧力に苦しむイラクのクリスチャンが散らされることなく、団結してイラク社会の『地の塩と光』になれるように、我々は祈らなければならない」と訴えた。
モーラー氏はこれまで米クロスウォーク(電子版)でイラク内外のイラク人キリスト教徒に対し、信教の多様性を認める候補者に投票するよう呼び掛けていた。だが、このような候補者は極めて少数であることに加え、モーラー氏はキリスト教系候補団体について「選挙資金不足が深刻な状態」と懸念を示していた。
イタリアを本拠地とするアジア・ニュースが30日に伝えたところによると、先月選挙管理委員会に候補者名簿を提出した70の政党・組織のうち8団体がキリスト教政党だったが、その後、これら8団体は相次いで資金不足を報告していた。武装勢力による選挙運動の妨害も激化し、キリスト教政党の主張が国民まで届いたとはいえない状態だったという。
報道各社は31日、イラク選管当局はテロ攻撃の危険の中での投票率は予想を上回ったとしており、イラク暫定政府と米政府は共に「大成功」と選挙を評価している、と伝えた。また、選挙の在外投票実施を請け負う機関は30日夜、記者会見し、在外投票について「最終的に90%かそれ以上の投票率になる」との見通しを明らかにした。最終結果の確定には10日前後かかるとみられる。