NGO団体「アムネスティ・インターナショナル」(本部・英ロンドン)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などは19日までに、日本政府が18日トルコ国籍のクルド人父子をトルコへ強制送還したことについて相次いで声明を発表し、「深刻な懸念」を表明している。
アムネスティ・インターナショナル日本が19日発表した声明によると、送還されたのはトルコ国籍の男性アハメット・カザンキランさん(49)とその長男(20)で、UNHCRから難民(マンデート難民)に認定されていた。報道各社によると、カザンキランさんの家族を含むクルド人2家族の弁護団は会見で「国際的に非難される異常な行為だ」と批判した。毎日新聞などによると、日本に滞在中のマンデート難民が自発的意思に反して強制送還されたのは初めて。
各紙が伝えたところによると、カザンキランさんは90年に来日し、一度帰国した後96年に日本に再入国した。「母国でクルド人自治を求める運動をしたため、戻ったら殺される」と主張。UNHCRは難民と認めたが、クルド人が日本で難民と認定された例はなく、法務省は3回の申請をすべて退けた。在留資格も得られず、退去強制令書が出ていた。 17日にカザンキランさんらが仮放免の期間延長申請のため、東京入国管理局に出頭したところを収容され、18日午後の便で本国に送還された。
朝日新聞は19日、UNHCR駐日地域事務所のナタリー・カーセンティ首席法務官は「送還は難民条約に反する。遺憾だ」と話した、と伝えた。
また、法務省入国管理局は「UNHCRとは難民の解釈や認定の目的も違う。手続き過程で虚偽の申請もあり、送還が相当と判断した」と説明しているという。
アムネスティ・インターナショナル日本が18日に発表した声明は以下;
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アムネスティ・インターナショナル日本は、本日、トルコ国籍クルド人の父と息子が日本政府により強制的に送還された件につき、重大な懸念を表明する。
父子は、トルコでの政治的迫害を逃れるため、日本に居住している難民条約上の難民として、国連難民高等弁務官事務所からも認定(マンデート難民)を受けていた。今回の送還は、こうした事情すらいささかも考慮しておらず、難民条約35条に規定されている協力義務をも放棄したものと看做しえる。
「マンデート難民」の認定を受けた人が、その自発的意思によらず送還されたのは、今回がはじめてである。また、父子は17日午前中に品川の東京入国管理センターに収容され、その翌日の18日午後に送還されていることから、送還手続きが極めて異例の速さでおこなわれている。
日本政府は、トルコ系クルド人について、トルコ国内でクルド人に対する人権侵害が続いているにも関わらず、現在までに一人も難民として認定していない。
父子は、日本に家族とともに居住していた。今回の措置はこの家族を分離させただけではなく、家族も含めて今後の危険に身を晒させる結果となる。
アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府に対し、父子の送還後の結果に責任を持ち、二人の身の安全を確保するとともに、残された家族に対しても適切な保護措置を講じるよう要請する。
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