日本キリスト教協議会(NCC)は4日、小泉純一郎内閣総理大臣に対しイラクからの自衛隊撤退を求める「自衛隊撤退を求める要望書」を同日付で提出した。
NCCからのイラク自衛隊派遣に関する声明では、NCC平和・核問題委員会が今年4月、イラクで邦人3人がテログループと見られる集団に拘束された際に「イラクからの自衛隊即時撤退を求める声明」を提出していた。
要望書は、鈴木伶子議長と山本俊正総幹事の連名で小泉首相にあてられ、先月のイラク日本人殺害事件について「残虐な形で殺した武装勢力に対し、強く抗議する」としたうえで「日本政府は武装勢力の自衛隊撤退の要求を一蹴した」として政府の対応を批判し、イラクからの自衛隊撤退を求めている。
NCCによる要望書は以下。
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2004.11.4
内閣総理大臣 小泉純一郎 殿
日本キリスト教協議会
議 長 鈴木伶子
総幹事 山本俊正
自衛隊撤退を求める要望書
香田証生さんは、かけがえのない命を残虐な方法で奪い取られました。
私たちは香田さんを、これほど残虐な形で殺した武装勢力に対し、強く抗議します。同時に、武装勢力が、香田さんの解放と引き換えに自衛隊撤退を要求したとき、それを一蹴した日本政府の態度にも強く抗議します。そして、今後ふたたび、このような形で人の命が奪われることのないよう、自衛隊の撤退を強く要望します。
私たちは、香田さんの無事を祈り求めることを通して、一人の人の命の重さを感じていました。そのことはイラクの人々の命の重さにも目を向けさせました。イラクでは、戦争の「大義」が失われた後も続く米軍の攻撃と、それに抗議する武装勢力の活動により、毎日、多くの一般市民が命を奪われています。香田さんの死は、このような状況で起こりました。武装勢力は、米軍が攻撃を続ける限り、世界のどこかで再び残虐な行動を繰り返す恐れがあります。また、自衛隊がイラク駐屯を続ける限り、日本はアメリカに同調するものとして標的とされ、人命が奪われる危険があります。事態は、香田さんが戦闘地域に足を踏みいれたから殺害されたということにとどまりません。イラク攻撃が続く限り、イラクはもちろん、世界中で人々が生命の危険にさらされるのです。
私たちキリスト者は、武力で平和は創れないと信じています。イエス・キリストは捕らえられたときもなお、「剣をとるものは剣で滅びる」と弟子たちを諌められました。香田さんのご家族が、耐え難い悲しみと苦しみの中で発表なさった「イラクの人々に平和が来るよう祈ります」とのメッセージに、イエス・キリストに従う姿を見ます。イエス・キリストは、小さなものがひとりも滅びないようにとの願いに、ご自身の命をかけられました。その願いを今の世界に実現するためにも、香田さんの死を堅く心にとめ、日本でも、イラクでも、そしてアメリカでも、世界中の人々が平和に安心して生きられるよう努力をすべきです。
今、緊急に求められることは、イラクでの完全な戦争の終結です。米軍は、相手を破壊しつくすことで、敵を絶滅できると信じて攻撃を開始しました。しかし、いま、イラク戦争は泥沼化し、解決のめどが見えません。敵を殺すことで敵に勝つのではなく、敵を愛すことで敵をなくすという、180度の方向転換が求められます。そのためにも、日本政府は、自衛隊を撤退し、憲法第9条の非戦の精神で国際社会、特に米国に、攻撃の中止を働きかけるべきです。これ以上、悲惨な出来事が起こらないうちに、一刻も早い政府の決断を要望します。
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