現職ジョージ・ブッシュ大統領の勝利に終わった米大統領選挙では、イラク戦争のほか、中絶問題や同性愛問題などキリスト教界でも話し合われている倫理問題が取り上げられ、大部分のクリスチャン票がブッシュ側に動いたことも影響した。
米CNNの調査によると、プロテスタント系クリスチャンの54%、カトリックの52%がブッシュに票を投じた。また、毎週継続的に礼拝に出席するクリスチャンによる投票の64%以上がブッシュ票、ときどき出席するクリスチャンの票でも58%以上という結果で、ブッシュの主張が信仰熱心なクリスチャンに評価されたことを示している。
反対に、ノンクリスチャンの過半数がケリーに投票した。また、クリスチャンでも、礼拝にまったく出席しない人や年数回だけ参加する人の過半数(それぞれ62%、54%)がケリー票を投じた。
妊娠中絶反対を訴えるプロライフ団体は、ブッシュ大統領の再選で中絶禁止制度の発展に期待感を示している。日本で数少ないプロライフ団体のひとつ、プロライフ・ジャパン(東京都町田市)の麻生能雄代表(LTL国際キリスト教会町田チャペル牧師)は「(ブッシュ再選は)非常にうれしい。ブッシュはプロライフの政策を行ってきた。もし(女性の中絶の権利を第一に主張する)プロチョイス派のケリーが当選していたら、ブッシュがしてきたことをすべて変えてしまうかもしれない」と胸を撫で下ろす。
麻生代表はブッシュ再選の影響について、最高裁の判事指名権がブッシュ大統領にあることを挙げた。「最高裁は、違憲裁判の最終決定が下される所。プロライフの大統領はプロライフの判事、プロチョイスの大統領はプロチョイスの判事を選ぶ。」と同代表は説明する。
プロライフ・ジャパンが全政党を対象に行ったアンケート調査によると、日本の政党は総じてプロチョイスだ。政治家もプロチョイスか、またはコメントを控えるという。麻生代表は「個人的にプロライフでも、周囲から支持を得られないことを理由にコメントをしない。一般的な日本人はプロライフなど考えたこともないのでしょう」と分析する。
「小さくても、人の形をしていなくても、神から与えられた尊い生命です」と話す麻生代表は、ブッシュが発表する公約等から日本人にもプロライフの考え方を知ってもらえれば、と述べた。