19日より来日中の中国基督教協会(CCC)代表団は、スケジュール最終日の25日、関西学院大を訪問し、団長で三自愛国運動委員会委員長の李●虹氏が同大の学生ら約200人を前に講演した。李氏は「自治、自養、自伝」からなる「三自」が「中国文化に根ざした教会の発展においてもっとも重要なものだ」と現在の中国におけるプロテスタント教会の事情について持論を述べた。
李氏は「教会と政府の間に従属的な関係ない」と述べ、中国においても、宗教関連の法や制度の下、信教の自由が保障されていることを主張した。国際人権団体や政府未認可の教会、いわゆる「家の教会」「地下教会」などからは中国国内での信教の自由が著しく制限されているとの非難があり、これを意識しての発言とみられる。問題に対する認識のすれ違いを示すかたちとなった。
日本キリスト教協議会(東京・西早稲田、NCC)中国委員会によると、「三自」の「自治」とは、外国の教会から干渉されずに中国人が教会を運営し、教会が国際的、政治的に独立を目指すもの。「自養」は、伝道のために海外の教会から支援を受けず、中国人による教会運営を通して財政的な自立を目指す。「自伝」とは、外国人宣教師に支援を求めず、中国人自らが伝道して伝道活動の自立を目指すもの。
「三自」は、中華人民共和国の建国後、「三自革新運動」や「三自愛国運動委員会」などを通して中国の公式プロテスタント教会史に支配的影響を与え、文化大革命以前は「キリスト教内に潜伏する反革命分子と腐敗分子を見つけ出す」という教会内の告発運動としての役割を果たし、政府によるキリスト者の弾圧に寄与した。
現在も「三自」を掲げる教会に対し批判が集中していることについて、「三自」教会と相互訪問を重ねてきたNCC中国委員会は、「今日の『三自』教会の姿を正しく表したものでない」と反論している。
講演に出席した学生からは、外国人宣教師が中国で宣教する権利や中国語訳の神学書を出版する権利が制限されているのではとの発言があり、これに対して李氏は、「中国教会に課せられた今後の課題である」と問題の存在を認めた。なぜキリスト教が中国で急速に成長したかという問いに対しては、「中国のキリスト教が国民の関心にこたえ、中国が伝道者を多く生み出したからだ」と説明した。
「最近の経済の急成長により都市部と農村部の格差が広がっている中国で、若者たちはキリスト教に何を求めているのか」との質問に対し、李氏は「教会に通う若者は今まで以上に増えている。若者たちが物質的な満足より霊的な満たしを求めているからだ」と答えた。
代表団は訪日中、日本ルーテル神学校、日本聖書協会、聖路加病院など国内のキリスト教関連施設を訪問した。中国基督教協会は1980年に設立されて以来、日本キリスト教協議会(NCC)と代表団による交流を行っており、中国からの代表団訪日は今回が3度目となる。
●は「剣」の「やね」の下が「ツ」の下に「一」