イスラム教法廷裁判勝訴、カトリック反発
カトリック系イタリア幼稚園に掲揚されていたじゅう字架が1人のイスラム教徒の主張で教室から撤去するよう判決が下されたことを受けて、中央法廷とカトリック教会が対立している。
この論争はイタリア在住のイスラム教徒で移民者であるアデル・スミス(Adel Smith)さんから始まった。
イスラム教徒であるスミスさんは自分の子供たちが学校内にあるじゅう字架を避ける権利を主張した。彼の意見は学校側の判断で却下され、法廷にまでこの問題を持ち込んだ。
イタリアは伝統的に旧教が支配していたこともあり、1920年ごろから国立学校に関しては掲揚が法で定められていた。
ローマ教皇庁とイタリア政府は1984年に法律を改正。しかし学校はこれまでも継続して教室にじゅう字架を掲揚している。
イタリア中央法廷の判事は「教室内のじゅう字架は旧教を宇宙の中心とする国家の絶対的な宗教意識を露呈するもので、学校の多様性を目指す国側の意向や最近制定された同様の法律に反するものと見なし、じゅう字架は教室から撤去されるべき」という判決を下した。
学校では法廷の判決を待つ30日間もじゅう字架の掲揚を控えるよう命じられていた。
一方、裁判勝訴の後、スミスさんは「私はじゅう字架と争うのではない。ただ私の子供達が勉強する教室で一宗教のシンボルを掲げておくことが法律上正しくないということを証明するのだ」と語った。
法廷の判決は政府官僚たちやカトリック関係者に大きな衝撃を与えた。
同学校区内修道院・修道院長のエシリル・リオトニー氏は「ほんの数人が異論を述べたからと言って国民の宗教と文化のシンボルであるじゅう字架を撤廃するなど考えられない」と法廷の判決に反発した。
また教会の教育部長を務めるモラッティさんは、じゅう字架の掲揚が禁止になれば、全ての学校や病院からも撤去することになってしまうのではと懸念を表した。