2000年4月の『ミレニアム報告書』の中で、コフィ・アナン国連事務総長は、情報通信技術(ICT)に関する専門知識を有するボランティアの協力によって、先進国と開発途上国の間にあるデジタル・デバイド(情報格差)を縮小させようとする新しい計画を明らかにした。 それが、国連情報技術サービス(United Nations Information Technology Service:通称UNITeS ユニテス)だ。
ユニテスは、途上国の人々や組織のICTに関する迫ヘ強化を図り、それを通じて情報格差の拡大を阻むと同時に、インターネットや他の情報通信技術によってもたらされる様々な機会を、途上国の人々がうまく捉えることができるように支援するというもの。 国連ボランティア計画は、 この新しいフレームワークの調整機関としてICTの分野におけるボランティアの需要と供給をマッチングさせる橋渡し役を果たしている。
ユニテスは、国連機関、各国政府、非政府組織(NGO)、民間セクター、大学等の様々なパートナー機関との協力そしてネットワークによって支えられており、特に優秀な人材や知識の採掘場である大学機関や研究機関によるネットワーク作りを積極的に推し進めている。今回、これらの趣旨に賛同し、日本の大学機関としては初めて、関西学院大学がユニテスの提携機関として参加することとなった。
協定を結ぶことでこのネットワークの中に入った大学は、ICT関連技術において秀でた大学関係者(主に学生、ただし教官なども含む)をボランティアとして、途上国のプロジェクトに直接派遣することで、開発途上国の人や組織の情報通信技術の向上に貢献する。また、情報通信技術を開発の分野に応用するということに関して、知識や技術のリメ[スを発展させることにも貢献することが期待される。 現在、アメリカのジョージ・メーソン大学、 スペインのマドリッド自治大学との提携によるボランティア派遣事業が進んでおり、関西学院大学との提携は世界で三番目となる。
今回、関西学院大学と国連ボランティア計画(UNV)の間で結ばれた協定に基づく、このボランティア派遣の共同事業の詳細は以下の通り。
1. UNVと関西学院大学は、2004年度からの3年間 (2004年4月-2007年3月)、日本では初のパイロットプロジェクトとして、学部生も含む学生や大学関係者を、毎年9から13名、最大35名まで、デジタル・デバイドを解消することを目的としたボランティアとして途上国へ派遣する。
2. 学生の派遣にあたり、関西学院大学は、UNVから照会されたボランティア派遣候補地、職務内容などを検討し、秋学期に行う募集・選考を経て、派遣候補学生とその派遣先を決定。
3. 派遣者の決定後派遣の約2カ月前、関西学院大学はUNVの東京事務所等の協力を得て、渡航前の事前準備プログラムを派遣者に提供。
4. 要請先の国に派遣された学生は、各国にあるUNV現地事務所が受け入れの窓口となり、それぞれの配属先へ派遣され、その配属機関の監督の下、与えられた任務を遂行する。
5. 関西学院大学が派遣する学生およびボランティア受け入れ機関は、UNVと関西学院大学宛に進捗状況のレポートを提出し、UNVと関西学院大学がそれに対して業績評価を行う。
6. 任期を無事完了し、関西学院大学の課題(レポート作成)などを完遂した派遣学生には、UNVから修了証書を授与されると同時に、関西学院大学から所定の単位(学部生の場合最大16単位)が授与される。
ユニテスの大学ボランティアは、これまで、ボツワナ、ボスニア・ヘルツェコビナ、エクアドル、インド、ヨルダン、コソボ等の国々で活躍してきた。 これまでの例では、主な要請機関(受け入れ機関)は国連機関の途上国における現地事務所やそのプロジェクト、政府機関、また現地のNGO組織など。任務の内容には教育省のコンピューター・リソースセンターの立ち上げと事業管理の支援、教員と中学校の生徒に対するICTトレーニング、国連開発計画(UNDP)のコソボ事務所における業務用のイントラネットこう築などが含まれる。
2002年には、このユニテスの大学ボランティアによる枠組みは、その功績を認められ、イタリア・ローマ市が主催するグローバル・ジュニア・チャレンジ賞を受賞した。 ユニテスとUNVは、今年ジュネーブで開催される「世界情報社会サミット」においても、「ボランティアと新技術」という作業部会の中で中心的役割を果たすことになっており、今後も関係事業に積極的に関わっていく模様。
本件の詳細は
国連ボランティア計画
東京都渋谷区神宮前5-53-70 UNハウス7階
国連開発計画東京事務所
電話:03-5467-7815
http://www.unv.or.jp/
関西学院大学
兵庫県西宮市上ケ原一番町1-155
電話:0798-54-6017(広報室)
提供:国連ボランティア計画=UNV=