米調査会社が今年3月に日本のクリスチャン人口を4パーセントと発表したことを受けて、1パーセントとしていた従来のデータとの差について考える集まりが18日、お茶の水クリスチャンセンターで開催された。中島秀一牧師(日本イエス・キリスト教団荻窪栄光教会)久保田文吾氏(リバイバル新聞社編集長)、花薗征夫氏(教会インフォメーションサービス代表)が講演した。講師らは教会を離れた信徒や家庭教会の拡大の可能性、異端・カルトの存在、キリスト教に対する偏見などを要因として挙げたうえで、伝道の緊急性を強調した。
米ギャラップ社が今年3月に発表した世論調査で、日本のキリスト教徒が人口の4パーセントに上るとの結果が発表された。従来のデータとの差について、久保田氏は、福音に対する日本人の知識不足を指摘した。「福音を知らないのに『キリスト教は分かっている』と、(メディアなど)何らかの手段で思っている」ことの危険性を訴えた。日本人は超自然現象を信じたり、霊や死後の世界を考えたりする傾向が強い一方で、それらを宗教と関連付ける機会に乏しい、との同社のビル・マッケイ氏の意見を紹介。伝道を野球に例えると、慈善活動や音楽などの変化球も必要とした上で、イエス・キリストの御名を率直に伝える「直球」を軸として戦略を立てるべきだと強調した。同社が日本人について「集団に対する罪悪感のほうが個人に対する罪悪感よりも大きい傾向にある」と分析したことを紹介し、自分と真理(神)との関係、個々人の人間関係を大切にするべきだと諭した。
花薗氏は従来データである「1パーセント」の内訳を説明し、過去数十年間でキリスト教徒が人口の0.44パーセント、105万9282人(2005年3月末現在、カトリック、オーソドックス教会含む)と報告した。電話調査をしたギャラップ社と、教会や教団からの報告を基にしたCISとの調査方法の違いを指摘。同社の調査対象が個人だったことから、花薗氏は「日本人の心の飢え渇きが浮き彫りになったのでは」として福音を伝えることが急務であると述べた。
中島師はCISの調査報告(2002年)を引用し、教会員の約半数しか礼拝に出席しないこと、青年層が激減していることが、個人を調査対象とした同社の調査結果に影響したのでは、と述べた。教会停滞の要因を教会内外から分析。外的要因として?天皇制などの国家体制、?日本の(和の)文化・宗教的土壌、?経済発展による物質偏重主義、?異端や似非(えせ)宗教など社会問題を起こす宗教団体の問題、?社会(モラル・倫理)の腐敗と自然災害、?安定した生活における救いの渇望、?IT革命を中心とした急激な社会の変化――、内的要因として?教派の多様化(と不一致)、?牧師の高齢化と献身者の減少、?牧師や指導者の自信喪失と精神的負担、?信徒の高齢化、?結婚や養育にみる家族内の信仰の継承の不徹底(と失敗)、?信徒の(賜物の)活用の不備、?教会建築の急増に比例して増える経済的負担――を挙げた。「教会建物が増えているが信徒が減少している」と憂慮を示した。
中島師は、宗教心が対象を持たないことに対して信仰心が明確な対象を持つと説明し、「日本人は信仰心に乏しい」と指摘した。日本が「恥」の文化で横並びの人間関係を強調する日本とは対照的に、西洋は「罪」の文化で縦の関係を重んじる。中島師は、統一協会やものみの塔(エホバの証人)などの異端が各地で戦略的に活動をしていることを懸念した。キリスト教会同士が不和や分裂を避けて伝道、牧会の攻守両面で協力し、その経過と実績を明らかにする「風通しのよい教会」を形勢していくべきだと語った。
この研修会には主催の伝道団体連絡協議会(姫井雅夫会長)会員ら15人が参加。開閉会礼拝では姫井師と浅見鶴蔵氏(同副会長)が司会とメッセージを担当した。姫井師は閉会礼拝でピリピ1:5−6を引用し、「問題はいたるところにあっても、キリストのあわれみがあって前進できる」と述べ、日本宣教のために仕える決心を改めて強調した。質疑応答や交わりの時間、日本の救霊のために祈る時間があった。同協議会は、教派や教団同士の相互理解と協力を進めて、日本のプロテスタント宣教150周年を迎える2009年に向けてキリスト教界の土壌を整備したい考えだ。