無政府状態が続いていた東アフリカのソマリアで、イスラム原理主義勢力「イスラム法廷会議」(UIC)が28日、エチオピアに支援されるソマリア暫定政府軍の進撃を受けて首都モガディシオから撤退した。エチオピア軍と暫定政府軍は首都モガディシオに入り、大きな抵抗も受けずに首都を掌握した模様だ。
この後、ソマリア暫定政府軍側は記者会見を開き、「イスラム原理主義勢力がほぼ崩壊した」と述べた。現在、政府軍側は首都での戦闘を避け、イスラム法廷を包囲して降伏を促すとしているが、イスラム法廷は攻撃態勢を崩していない。
ソマリアでは、首都モガディシオなどを支配するイスラム法廷と、首都の西、バイドアを拠点とする暫定政府との間で対立が続いてきた。人口約200万人のモガディシオは、今年6月からイスラム法廷の支配下に入っていた。
ソマリアのイスラム教勢力とエチオピアのキリスト教勢力は、60-70年代の戦争の後も衝突を続けてきた。ソマリアでは、イスラム軍閥が勢力を拡張させ、90年代に入って内戦を起こし、暫定政府軍が樹立された後も事実上イスラム軍閥に支配されてきた。イスラム軍閥勢力は首都を掌握し、独自の国家観に基づいた社会統制を実施し、イスラム刑法を導入するなど強硬イスラム政策を繰り広げてきた。
こうした状況の中、米国の友邦であり、国民の約半分がキリスト教徒のエチオピアがイスラム勢力の拡大を阻止し、ソマリア暫定政府軍を保護するという名目で宣戦布告すると、イスラム軍閥勢力は、イエメン、エジプト、シリア、リビア等の国家のイスラム系武装組織らに「ジハード」への参戦を要請した。
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〈ソマリア紛争〉 人口823万人のソマリアは9割以上がイスラム教徒。英国とイタリアの分割統治から60年に独立。91年に社会主義政権が崩壊した後、武装勢力の乱立による無政府状態が続いてきた。04年10月には主な勢力の選挙により、隣国ケニアで暫定政府が発足した。だが、反発するイスラム勢力「イスラム法廷連合」は今年6月に首都モガディシオを制圧し、奪還を目指す暫定政府側との対立が激化。今月24日には暫定政府を支援するエチオピアが本格的な軍事介入を始めた。