ビル・ゲイツ氏と妻メリンダ氏は共に、慈善団体「ビル・アンド・メリンダ慈善基金」の活動に力を入れている。
この慈善基金は米シアトルに拠点を置く総資産290億ドル(2兆9000億円)にも及ぶ慈善団体で、世界の健康、貧困、発展途上国における科学技術へのアクセスの増加のために活動資金を投資している。米国内においては公立図書館における教育、テクノロジーに焦点があてられているという。
ビル・ゲイツ氏は発展途上国における健康問題改善のために、1994年にウィリアム・H・ゲイツ基金を設立。また1997年にはゲイツ・ラーニング基金が設立、その後改名され、ゲイツ図書館基金となった。1999年には、この二つの基金が合併して、現在のビル・アンド・メリンダ基金となった。ビル&メリンダ夫妻は父親に当たるウィリアム・H・ゲイツ氏と共にこの慈善団体の共同議長を務めている。
この基金は世界公衆衛生、特にHIV、マラリア、結核の対策に焦点があてられており、これらの先駆的慈善基金となっている。
アトランタに拠点を置き、70カ国以上で貧困対策問題に支援しているNGO"CARE"のチーフスタッフのアン・ライナム・ゴッダード氏は、「ビル氏が慈善活動に力を入れられているというのはすばらしい朗報だと思います。ゲイツ氏が慈善事業に全精力を傾けることで世界公衆衛生に関して慈善団体が成しうる域を大きく高めることができるでしょう」と述べた。"CARE"はおよそ1000万ドル(10億円)をゲイツ氏の慈善団体から受け取っている。
ゲイツ氏らがこの慈善基金を設立したとき、ゲイツ氏一家は故アンドリュー・カーネギー氏が設立した22億ドル(2200億円)の資産を有するニューヨーク・カーネギーコーポレーション会長のバルタン・グレゴリアン氏と会合した。
グレゴリアン氏はそのときのビル氏の印象について、「ビル・ゲイツ氏は常に富には責任が伴うと信じていました。アンドリュー・カーネギー氏も同様です。誰かが貧しければ、お金を与える。問題があればそこにはそれに対処する誰かがいる。それが慈善です。慈善活動とはただ単に寛大さを通してだけではなく、投資と計画性を通して問題を解決していくことなのです。それが、ゲイツ氏が望んでいたことでした」とゲイツ氏に対し、感心の意を示した。
ゲイツ氏は一度そうと決めたら一意専心に打ち込む性格で、そのことは米政府によるマイクロソフト社に対する反トラスト訴訟の最中にも垣間見られた。グレゴリアン氏は、「その訴訟の只中にあっても、ゲイツ氏は私たちとの慈善基金に関する会合の最中に、決して電話を取ったり、他の事業のために退出したりするようなことはありませんでした」と語った。
また米経済誌フォーチュンなど米メディアによると、米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏(75)は25日、保有資産の大半を慈善団体に寄付する意向を表明し、同氏が会長を務める米バークシャー・ハサウェイの保有株式の約85%を7月から段階的に5つの慈善団体に寄贈するという。その寄付総額は約370億ドル(約4兆3000億円)近くに達する見込みであり、内8割強がビル・アンド・メリンダ・ゲイツ基金に寄付される見込み。バフェット氏も慈善団体を設立・運営してきたが、旧知のゲイツ氏の活動に共感しており、ゲイツ氏の財団に資産を集約することで資金は有効に活用されると判断した。