胚(はい)性幹細胞(ES細胞)論文を捏造(ねつぞう)し、世界的な難病治癒のための新技術が発見されたことに対する期待を裏切った業務上横領や詐欺罪などの疑いで在宅起訴されていた黄禹錫(ファン・ウソク)・前ソウル大教授(52)は20日、被告人として法廷に出廷した。
黄前教授は先月、研究資金横領で起訴された。検察当局によると、黄前教授らは米科学誌サイエンスで発表した04年と05年の論文の内容を真実のように装い、民間企業から支援金約2億3000万円をだまし取ったとされる。また民間団体および政府から研究資金として約8310万円を横領したとされる。検察は「倫理に背き、自己の目的だけを達成しようとした」と厳しく批判した。
また黄前教授は、研究のためにヒトの卵子を購入したことで韓国生命倫理法を濫用した疑いでも告訴されている。
黄前教授は法廷で20日、04年に発表された主軸となる王前教授の幹細胞研究に関する画期的な学術論文でのデータ偽造については否定し、「私は研究過程には関与していなかった、私はただ単にその結果を受け取っただけ」とし、「私は他の研究員を何の疑念を抱くこともなく信頼していた。この研究結果を疑うことなく受け入れ論文に発表したのは明らかに私の過失であった」と述べた。
もし有罪判決が確定されれば、黄前教授は少なくとも3年の懲役刑に処される。黄前教授の研究に関わったその他5名の研究員らも同様の罪状で起訴されている。
検察側は冒頭陳述で、「黄被告による捏造・横領事件は、韓国人および世界中の人々にとって史上類のない詐欺事件である」とし、「黄被告の研究結果に大きな期待を抱いていたすべての人々にとって、今回の論文捏造事件は大変な失望と苦悩の念を抱かせた」と陳述した。
次回の黄被告の出廷は7月を予定している。
黄前教授は今年3月以来公に姿を現しておらず、ソウル中央地裁に到着した際は、とても神経が張り詰めているように見えたという。また、記者らの取材にも応じようとはしなかった。
黄前教授の支持者らは、黄被告の姿を見て、「最後まで支援します!」と叫んだという。支持者らは傍聴席に大群をなして座り、裁判の行方を見守っていた。
黄前教授はかつて世界的な幹細胞研究のパイオニアであり、世界的英雄として賞賛されていた。しかし知名度の高い2本の公式発表された論文で虚偽のデータを掲載したとして、3月にソウル国立大学獣医学科を解雇。データを粉飾したことは認めたが、同時に他の共同研究者らに対し、虚偽のデータを渡したことで自分を騙したとして訴えていた。
ES細胞研究の進展に関して黄前教授は、ヒトの基盤となる幹細胞は細胞のどの組織にも適用可能であり、アルツハイマーやパーキンソン病などの衰弱性疾患に苦しむ数百万人もの患者の画期的治療法として期待が持てるものであると主張していた。
患者の特定幹細胞を患者自身のDNAから創出するというのは、衰弱性疾患治療の画期的進歩であった。というのも、黄前教授の研究結果が真実であれば、体内で拒否反応を与えることなく欠陥細胞を取り替える治療法が理論上可能であることが発見されたからである。
黄前教授は、自らが主張する治療法を行う技術があることを主張すると同時に、今回の争議に関し、韓国国民に対して謝罪した。