【バントゥル、インドネシア(AP通信)】米国海軍は、壊滅的な地震で住居を無くし、強制移動を余儀なくされたおよそ65万人もの地元住民らに対し、総力を挙げて食料・医療支援を行っている。生存者救済活動も同時に進められているが、今後更なる生存者が発見される可能性は薄いとされている。
ジョグジャカルタ空港の滑走路の亀裂が修復された30日、米海軍による2機の貨物輸送機がジョグジャカルタに到着した。国連によると少なくとも21カ国が、27日に5800人以上の人々の命を奪ったマグニチュード6.3の大地震でホームレスとなった人々の支援活動に加わっているという。今回の地震で、64万7000人もの人々が強制移動を余儀なくされ、そのうち3分の1はホームレスとなって親類等と同居しているという。
インドネシア政府は31日、今回の地震で13万5千件もの家屋が崩壊し、瞬時に瓦礫の山と化したと報告した。
最も被害の激しかったバントゥル市にある大病院ではまだ患者が溢れ返っている。100台のベッドに対して患者が400人も待機しており、医師らは医薬品の供給不足に頭を悩ませている。
バントゥル市の大病院で地震緊急医療調整役を務める医師ヒダヤット氏は、「副木、ガーゼ、さらにはベッドまで不足しています。新しい副木の供給がありましたが、皆使い果たしてしまいました」と現地の厳しい現状を語った。患者らの9割は骨折しているという。
しかし、状況はいくつかの病院で改善されつつあり、以前は病院の駐車場や廊下に溢れかえっていた数百人の患者らの大部分が、現在はベッドの上で診療を受けているという。またジョグジャカルタ州の病院の外に設置された、溢れかえった患者を一時的に収容するテントも取り去られた。
国連人道支援トップ高官は、支援活動は順調に進んでおり、2004年のインド洋における津波で13万1千人もの犠牲者を出した時のそれに比べれば大きな改善が見られると報告した。
インドネシア政府によると31日現在、今回の地震における死者は5846名に達したという。
大部分の生存者は即席で作った掘っ立て小屋や避難所での生活を余儀なくされており、複数の家族が共同で料理を調達している。
政府が支援を約束したにもかかわらず、食料や飲料水の不足は深刻であり、数万人もの人々がダンボール箱を切り取ってプラカードをつくり、通行者に現金や物資の支援を呼びかけている。
マレーシアのレスキュー隊隊長によると現在、生存者や犠牲者の遺体を新たに発見する可能性は低いとされており、主な作業は破壊された家屋の撤去などに移行しているという。
中国から来た44人からなる医師団・レスキュー捜索隊チーム、地震学者らも到着し、現地での医療支援と5トンにも及ぶ支援物資を提供した。
タイ政府は今後48人の軍医を派遣し、医療用品を支給すると発表した。
マレーシア、シンガポール、ノルウェイなど他国の支援団体もすでに被災地域で活動を始めている。
日本では自衛隊の国際緊急医療援助隊(隊長・上野栄一等陸佐)の第1陣が1日午前7時、航空自衛隊小牧基地(愛知県小牧市)からC130輸送機で出発した。2日に被災地のジョクジャカルタ特別州に到着し、先遣隊と合流する予定だという。
援助隊は、陸上自衛隊第10師団(名古屋市)を中心とした医官ら18人を含め計36人で構成されている。医師や医薬品の不足による感染症を防ぐため、「医療」と「防疫」を二本柱に支援を本格化させる。先遣隊19人は31日、すでに被災地に到着して事前調査などを始めている。
またアジア開発銀行はインドネシア被害地域の復興のために6000万ドル(60億円) の助成金と低金利ローンを融資することを発表した。
ユドヨノ大統領は一時的に仕事場をジョクジャカルタに移動し、生存者と共に非難用テントで一夜を過ごした。そして「私は一ドルたりとも誤った目的で使われないように命令します」と語り、できる限り多くの資金を災害復興のために当てることを約束した。