【AP通信】UNAIDS(国連共同エイズ計画)によると現在、HIVウィルス撲滅に向けた世界的な運動が展開されているにもかかわらず、4半世紀の間に2500万人もの死者を出したエイズの蔓延は一向に収まる兆しを見せていないという。
UNAIDS事務局長のピーター・ピオット氏はジュネーヴでのAP通信による電話取材で、「エイズは、今後ますますグローバルに蔓延して世界の隅々にまで行き渡るのではないか」と警告した。
ピオット事務局長は、エイズ問題の悪化を防ぐためには未だ時間が必要ではあるが、数多くのエイズ蔓延現場において最善の策を取り行動で示さねばならないと指摘し、「私たちは次世代を見通して事を考えなければならないと思います。エイズに関する見解についてはますます多様性を帯びてきています。最終的にエイズ問題がどうなっていくかは、どのように私たちがこの問題に対してリーダーシップを取っていくか、どのように国際団体が対応し、既存の機関がこの問題に直面していくかにかかっています」と述べた。
ピオット氏は、全体的には決して絶望的ではなく、世界各地でいくらかの進展が見られることを言及した。たとえばタイやウガンダでは、HIVウィルスへの感染率は減少傾向にあり、その他ほんのいくつかではあるがケニアやジンバブエなどの国々で感染率減少の兆しが見え始めている。
しかしながらピオット事務局長によると、無防備な性交渉や不衛生な注射針を使用すること、あるいはこの二つの要因が重なり合って全体的にエイズはますます蔓延しているという。
最近、最貧国に住む人々の中で130万人ほどの人々に対して抗レトロウィルス薬による治療が可能になったが、それでもまだ最貧国の8割もの人々にはこの薬が行き届いていないという。
ピオット氏によると、サハラ以南のアフリカ諸国はHIVウィルス蔓延の中心地になっており、全体的なアフリカ成人のエイズ感染率は上昇傾向にあるという。
ピオット氏は「世界でもっとも多い人口を抱えているアジア諸国は、エイズ蔓延の潜在的な恐ろしさを秘めています。とりわけ中国やインドのような10億人以上の人々を抱える国では、一部の人の感染が膨大な数の人々に対して影響を及ぼします。インドだけでも500万人以上の人々がエイズに感染しています」と述べた。
アジア太平洋地域では830万人もの人々がHIVウィルスに感染しており、サハラ以南アフリカ諸国に次いで高感染率となっている。
またインドネシア最東部のパプア州とオーストラリアの北側に位置する島を共有しているパプアニューギニアは政治的な不安定、貧困、女性に対する性的暴力が蔓延しているために世界でもっとも感染率が高い地域のひとつとなっている。
ヨーロッパ東部やアジア中央部では人々の経済水準が高くなり、アフガニスタンなどの国々を通して麻薬を購入し始める人々が増加している。それと同時にエイズ感染率も上昇しており、新たなエイズ蔓延の最前線となっている。ピオット氏は、「感染率は今のところはまだ低いですが、エイズが蔓延した先例諸国のことを考えると、今後の蔓延が懸念されます。また中東地域はHIVウィルスが急速に蔓延していない最後の地域だといえます」と報告した。