【インドネシアジョクジャカルタ(AP通信)】27日未明に生じた大地震によってインドネシア中央部の家屋、ビルなどが倒壊し、3000人以上の人々が死亡、数千人が負傷した。これはインドネシアにおいて2004年の津波による災害以来最悪の災害となった。
マグニチュード6.2の地震がインドネシア首都ジャカルタの中心部から約402キロメートル離れたジョクジャカルタでほとんどの住民が熟睡している早朝に発生し、近隣の町々に被害を与え、多数の死者をも生じさせる結果となった。
テレビ映像では倒壊したホテルや政府庁舎などが映し出された。道路や橋は破壊され、負傷者を病院に運び出すのを妨げているという。また一部の電話線も切断されてしまっているという。
ジョクジャカルタのホテルレセプショニストのナーマンさんは、「とても強い地震でした。すべての建物が衝撃を受けました。ホテル利用者は皆部屋から逃げ出しました」と述べた。
インドネシア大統領スシロ・バンバン・ユドヨノ氏は、多くの人々が子どもを引き連れながら路上に逃げ出しパニック状態にあることから、道路犠牲者を救出するために軍隊に出動命令を行ったという。ユドヨノ大統領は27日夜ジャワ地区中心部の被災地域を優先的に救援する方針を発表したという。
インドネシア政府高官による報告によると、すでに3000名以上が死亡したという。そのうち3分の2は最も被害の激しかったジョクジャカルタバンタル市で生じたという。
インドネシア赤十字社の報告によると避難民は20万人に達したという。
地震に伴って生じた混乱の中で、津波が生じるといううわさが広まり、何千人もの人々が車やバイクを利用して避難しているという。しかしながら日本気象庁によると今回の地震で死者を出すような破壊的な津波が生じる可能性は無いという。
医師らは何百人もの負傷者を病院の外でビニールシート、ゴザ、さらには新聞紙上にも寝かせて治療に奮闘しており、患者の一部は木の枝に点滴用器具を吊り下げて点滴を受けているという。
あるバンタル市の病院の医師は、「もっと助けが必要です。余りに多くの負傷者がいます。多くの人がここから避難する必要があります」と述べた。
また別の病院の医師は、自分の病院だけで60人の重傷者・死者を抱えており、廊下には次々と死傷者が寝かされ、死者の遺体を政府が計上する前に家族が遺体を引き取っていくケースも見られるという。
この病院の担当医師は、「数百人もの死傷者を抱え、もはや私たちの緊急治療体制は限界に達しています」と嘆いたという。
ジョクジャカルタ空港の滑走路も地震で被害を受け、同飛行場は少なくとも土日にかけて閉鎖されたという。
また、世界遺産のヒンズー教寺院群プランバナンの一部が損壊したことが報告されているという。
最も被害の激しかったバンタル市で露店を経営していた70歳の男性スバージョ氏は、今回の地震で妻を亡くし、家も失い、「私は妻を助けることができなかった…私は子どもたちを助けようとしていました、一人は足を骨折していました。それから家が倒壊しました。妻まで助けることができませんでした」と落胆しきった表情で述べたという。そして「私はこの事件を私たちの運命、神の御心であったと受け止めなければなりません」と付け加えた。
今回の地震の震源地はメラピ山に近接しており、メラピ山はここ数週間高温ガスや灰を噴出し続けており、大雲を生じているという。
27日に火山活動が増し、地震の後すぐに噴火が生じ、3km先にまで火山灰が飛散した。今回の火山活動はインドネシア当局によると地震との直接のつながりはないという。
すでに火山による被害地域からはすべての人々が避難し、今回の噴火による被害報告はなされていないという。
インドネシアは世界最大の群島を成す国であるが、環太平洋火山帯に位置しているため地震による隆起が生じやすい。
インドネシアは2004年12月26日のマグニチュード9.1の地震によってスマトラ島沿岸に13万1000人の死者を生じさせた津波を引き起こし、その他の国々でも津波によって10万人以上の死者が生じた。
また、在ジャカルタ日本大使館は、4月1日時点で届け出のあった在留邦人91人のうち85人の無事を28日未明までに確認したという。このほか現在ジャワ州を観光中の日本人旅行者は19名であるという(日本旅行業協会)。外務省によると、現地在住の日本人女性1人が落下物で軽傷を負ったことが確認されている。
また今回の地震の救援対策としてNHK、NHK厚生文化事業団、日本赤十字社では、ジャワ島中部地震の救援金の受け付けを、5月29日から6月30日まで行っている。救援金は、各地域のNHKの窓口で受け付けている他、送金の場合は、郵便振替で口座番号00110−2−5606日本赤十字社でも受けつけている(送金の場合の振替用紙の通信欄には「ジャワ地震」と記入)。