【北京(AP通信)】中国政府の承認を得たカトリック教会が14日、ローマ教皇によって承認されていない3人目の司教を就任させた。このことですでに二人のローマ教皇未承認司教を就任させたことで関係が悪化していた中国−バチカン間の関係をさらに悪化させることになった。
14日、ヴィンセント・ツァン・シルー司教が中国閩東教区の長として任命されたことを500人以上のカトリック教徒や中国政府高官が祝い、香港ケーブルテレビ局がツァン司教が金の杖と司教冠を身にまとっている姿を放送した。
この数週間で、中国政府はローマ教皇の承諾なしにすでに二人のローマカトリック司教を任命していた。このことでバチカンと中国政府公認教会の関係が悪化していた最中における3人目の司教の任命である。
カリフォルニアサンディエゴ大学の中国−バチカン関係の専門家、リチャード・マドセン氏は、「このような行為はせっかくバチカンー中国関係を正常化しようとしている努力を破壊することにつながることをしっかり認識すべきです。このことで中国政府はこれ以上バチカンと関係を持ちたくないということをある程度表意していることが伺えます」と述べた。
中国政府公認カトリック教会を管理している政府高官の1人は、今回の式典はずっと前から計画されていたことであるとし、ツァン司教の就任についての批判を退けた。
また今回の出来事に関してバチカン側はノーコメントの立場をとったという。
1949年に政権を握って以来、共産党によってコントロールされたカトリック教会はバチカンの管轄外にされてきた。そのためカトリックの体制が分裂せざるを得ない状況をもたらした。中国では1千万から1千4百万人ほどの中国政府非公認教会の教会員が存在しているといわれている。
閩東教区は、福建省の南部に位置しており、6万人以上のカトリック教徒が存在し、その中で1万人しか中国政府公認教会において礼拝を行っていないという。
このことで中国カトリック教会に分立を引き起こすことになっている。一方は中国政府から独立してカトリック地下教会としてローマ教皇の権威に従って礼拝を行っており、他方は中国政府にコントロールされた中国政府公認教会という二重構造である。香港のカトリック教会高官によると、昨年8月にすでに中国政府非公認カトリック教会で別の司教がローマ教皇によって任命されているという。
ツァン氏は閩東教区司教として一年前に中国政府が承認したが、このことは公にはされなかった。ツァン氏は電話取材で日曜日の祝典についての議論と彼への注目によって、彼の司教としての職務をより困難にさせるとし、「私は今回の祝典の騒ぎに関する責任が私にあるとは思いません。しかしこの問題が騒ぎ立てられたことにより、一部の人々が私の就任のことについて疑問に思い始めました。このような騒ぎは司教職を行うに当たってなんの良い効果もありません」と述べたという(香港ケーブルテレビ)。
中国の司教の大部分は中国教会とバチカンによる事前の話し合いを通じて密かにローマ教皇の承認を受けているという。
そのようななかでツァン氏は司教に就任する前からも議論を醸していた。実はツァン氏は2000年にも司教として任命された5名の中にすでに存在していたが、当時もローマ教皇によっては承認を得ていなかった。
この際、ツァン氏は閩東教区の司教補佐と名乗ることで議論をかわした。教皇によって承認されていないために、ツァン氏は聖職者を任命したり、献身礼やその他聖職者が司る宗教儀式を行うことは避けてきたという。このことが今回の中国政府による司教承認を助長することになったという。ツァン氏の司教就任についてはバチカン側に二度申請書を提出したが、バチカン側は未だ返答を送っていない。
ツァン氏は香港テレビ局の電話インタビューにおいて、
「中国−バチカン関係は今両者の見識にかかっています。私はこの二者の関係が改善されることを願います」と述べたという。