【ケンタッキー州ルイビル(AP通信)】数学および哲学博士のウィリアム・デンスキー氏は米国内における進化論に関するあらゆる議論は10年後には問題にならなくなるだろうと述べたという。
なぜならそのときまでにチャールズ・ダーウィンによって150年前に提唱された進化論は「死んだもの」となるからであるという。
数学者でダーウィン進化論批判者のデンスキー氏はこの地球上でどのように生命が進化したかについてまだまだ学ぶべきことがたくさんあると述べた。またデンスキー氏は科学団体によって受け入れられている進化論では、地球上の生命進化に対して十分な答えを提供することは出来ないと信じており、「私は進化論のすべては今後急速に崩れ去ると思います」と述べたという。
デンスキー氏は知的創造論提唱者として最も指導的役割を果たしている米国人学者の一人であり、生命有機体の特徴の一部は超越なるものの介入を通して最もよく説明できると主張している。このようなデンスキー氏らによる知的創造論運動で地元の教育委員会、教会、またケンタッキー州州知事やブッシュ大統領をも巻き込む政治家らに衝撃を与えてきた。
しかしデンスキー氏の進化論の死を主張する声明について生物学者らはばかげていると考えているという。生物学者らは知的創造論は科学の領域において失敗しており、知的創造論の支持者らは受容力ある大衆に対して興味をかきたてようとしていると述べている。
デンスキー氏は数学と哲学の両方の分野で博士号を所有しており、ルイビルのサザンバプテスト神学校で知的創造論を教授している。
デンスキー氏は記者会見において「生物学的体系について私たちが超越なる知者の介入があると考えることができるようなパターンがあるかどうか疑問に思うのはもっともなことです。また地球生命に関する進化論的メカニズムの説明限界はどこまでなのかと質問されるのももっともなことです」と述べた。
ケンタッキー州知事のアーニー・フレッチャー氏は一月の州知事年次演説において、知的創造論は自明の真理であると述べた。フレッチャー氏は学校で知的創造論を教えるように奨励しているという。
これは昨年12月にペンシルバニア州連邦裁判所が知的創造論を地元学校の科学の授業で教えるべきではないという判決に反している。
米国判事ジョン・E・ジョーンズ氏は「知的創造論を設立した経緯に関する数多くの証拠の文献によって、知的創造論はただ単に創造論を改称しただけの一宗教的見解に過ぎないということが言えます」と述べた。ジョーンズ判事は知的創造論は科学理論としては欠落したものであるという。というのも、知的創造論は実証することができないからだ。
ケンタッキー大学の生物学助教授をしているジェームズ・クルーパ氏は、「彼は知的創造論に関する多くの宗教的裏づけをしています。ですから知的創造論はただ単に『神の理論』と呼ばれるべきです」と述べ、進化論が滅びることはないと主張した。
大学で進化論を教授するクルーパ助教授は「進化論は全ての生物学の基盤を支える原動力です。自然淘汰と進化論はこれからより強固なものとなっていくでしょう」と述べたという。
米国世論でも、進化論に関する見解は多様である。
2004年度のギャラップ世論調査においては、アメリカ人の35%しかダーウィン進化論は証拠によって裏づけされたものであると捉えておらず、他の35%は進化論を支持しておらず、29%の人々は良くわからないと答えた。
米国のいくつかの州議会においては、学校の授業で伝統的な進化論の授業を教えるのを否定する法案を考案中であるという。オクラホマ州およびミシシッピ州の議会では科学を教授する水準を変更する方針を導入したという。
シアトルを拠点とする知的創造論研究に資金提供しているディスカバリーインスティテュートの広報官ロブ・クラウザー氏は、「これは現在進行中の議論です。私は世論がある程度知的創造論に興味を示すことに何の驚きも感じません」と述べたという。
元英国教授で科学教育国立センター理事長のユージニー・スコット氏は、ダーウィンの進化論は無神論に関連しているという考え方によって進化論と知的創造論の議論は拍車をかけられていると指摘した。
スコット氏は、「科学という学問領域それ自体が自然の原因に関するものだけに限られていると人々は考えていますので、それ故に神は一切自然の作用に関わらないと言っているのです。私はわが国の進化論に関する全ての議論を理解する鍵はここにあると思います」と述べた。
そもそも科学分野は「止まっている物体はいつまでも止まっていて、動いている物体は止まろうとする力(空気抵抗や摩擦など)が働かなければいつまでも同じ速さで動いている」という慣性の法則を大前提にして発展しているのであり、この慣性の法則に「超越なる力」なるものは決して介入しない。
デンスキー氏やその他の知的創造論提唱者らは知的創造論はまだ発展段階で言えば「幼児期」に当たり、科学の授業で進化論と並立して教えることが出来るほど整えられた理論には至っていないことを認めている。クラウザー氏はディスカバリーインスティテュートは実際ペンシルバニア州の教育委員会がこのことを裁判に持ち出す行動に反対していたと述べた。
デンスキー氏は、「人々は私たちが熱心に知的創造論を授業で教える道を模索するに違いないと思い込んでいますが、私たちはそういう立場には居りません。授業で要求されるべきものは、進化論に関することであり、進化論を科学の授業で学ぶことによって生徒らは世の中には進化論を支持する証拠だけではなく、進化論に批判的な証拠も存在するのだということを学ぶことが出来る力が養われると見ています」と延べ、現段階ではこれで十分であるとしている。
また、デンスキー氏は、「私は知的創造論の発展には長い道のりがあるにしても、進化論が、その他のどんな科学的あるいは科学的になりうる可能性があるといえる選択の余地までも与えない状況にあることは非常に問題であると思われます」と述べたという。