【カタール・ドーハ】イスラム教預言者ムハンマド風刺漫画に対する激しい憤りはイスラム社会と欧米社会の分断を拡張している一要素に過ぎないと元南アフリカ聖公会のケープタウン大主教デズモンド・ムピロ・ツツ氏は話した。この問題を「より深刻な病の兆候」であると見なしているという。
国連が後援して開かれた、イスラム社会と西欧社会の分断の緩和を目的とした会議でツツ大主教とその他19人の代表団らは、この隔たりをつなぎ合わせる主な方法は若い世代に訴え、若い世代に対しより多くの教育を与えることであるという結論で合意した。
さらに彼らはこの双方の隔たりが癒されるには数年にわたる対話交渉が必要であり、いくつかの実践的な段階を乗り越えなければならないという点でも合意した。
トルコ国務長官で宗教専門家のメフメット・アイドゥン氏は、「今日直面している問題は、異文化衝突ではなく、むしろ双方の文化の無視、驕り、無神経さ、敵意を増加させる方法へと悪化している政治政策にある」と述べた。
28日火曜日に終了したこの会議の開催地であるペルシャ湾岸の州では、パキスタン・カラチ市でパキスタン最大のイスラム集団によって組織された5,000人以上、8歳から12歳までの子供たちが運動を行った。彼らは、「預言者ムハンマドを侮辱する者どもを絞首刑にしろ!」と繰り返し叫んでおり、米国国旗、イスラエル国旗、デンマーク国旗で覆われた棺を燃やすなどの過激な運動を行った。
1984年のノーベル平和賞受賞者ツツ元大主教は、昨年デンマークで出版された風刺漫画はより大きな問題へと発展する兆候であったとし、「風刺漫画によって起こった問題はより深刻な病の兆候であった。もしイスラム社会と欧米社会の衝突がなければ、風刺漫画問題は生じなかったかもしれない、もし生じたとしてももっと小規模なものになったであろう。」と述べた。
昨年9月に12枚の風刺漫画が発行され、それらが他の欧米諸国のメディアによて再発行されたことから、イスラム社会における大規模抗議デモに発展した。イスラム教徒らは欧米社会における表現の自由についても訴えるようになった。
27日月曜日にEU(欧州連合)は、イスラム教徒に対し風刺漫画の内容は攻撃的であり、残念に思うが、民主主義社会において表現の自由は根本的な権利で必要不可欠な要素であるとEUの見解を発表した。
今回の風刺漫画に対して憤激の意を示しているモハメド・ハタミ元イラン大統領は今回の会議で、
「我々は今日の世界に対し既に十分な誤解をしてきた。人々の生活習慣、信念、宗教を侮辱するのは表現の自由とは別である。これはただ単にイスラムの問題に帰結するようなものではなく、私たちは他国の信念を尊重し、我々の信仰するしないに関わらず、それぞれの宗教に対し敬意をもって接さなければならない。」と述べた。
ツツ元大主教は表現の自由はいくつかの義務を伴っていると述べた。さらに、イスラム教徒に対するイメージの否定的なステレオタイプ化を嘆き、なぜ北アイルランドの過激派プロテスタントとカトリック、米オクラホマ州爆弾テロリスト、ナチスなどは「キリスト教テロリスト」とは見なされないのかという疑問を投げかけ、
「KKK(クー・クラックス・クラン)の行動を見てみても、彼らは十字架をシンボルに掲げ、他者に対する憎しみを広め、暴力的な私的制裁を奨励してきた。しかし私たちは『KKKによって如何にキリスト教共同体が暴力を奨励するかという典型的な例が示された』などとは決して言いません。」と述べた。
今回の風刺漫画騒動で浮き彫りになったのはイスラム社会が直面している否定的なイスラム教に対するイメージのステレオタイプ化、経済格差、イスラム教移民に対する差別問題であるという。
3日間に亘って行われた今回の会議では生徒−教師間の幅広い交流を行うこと、科学技術、インターネットアクセスを貧困諸国において広く行き渡らせること、若者に異なる視野からものを見る機会を与えることなどが決定された。
この会議グループは国連事務総長コフィ・アナン氏によって昨年結成されたもので、イスラム社会と欧米諸国の対話促進、緊張緩和を目的としたものである。この会議はアナン事務総長に提案書を提出する前に、少なくとも今年度内に二度開催される予定であるという。
ニューヨークの律法学者で宗教解放人権団体"Appeal of Conscience"を創設したアーサー・シュナイアー氏は、
「風刺漫画問題は複雑な要素を含んでおり、すぐに片付けられる問題ではありません。我々は数ヶ月の視野で議論しているのではなく、数年の視野で議論しています。今の大人の世代は既に暴力によって毒されています。私たちは次世代の若者らがこのような偏見にとらわれずに育つように対策を練らねばなりません。」と述べた。