ソウルで開催されている北朝鮮の人権問題を追求する国際大会は9日、北朝鮮の人権改善と各国の関心を促す「ソウル宣言」を採択した。宣言は、北朝鮮政府に対し、脱北未遂や政治犯として逮捕された国民への暴力や処刑を即刻中断するべきなどと要求。同政府による人権侵害の解決に向け国際世論の形成の必要を再確認した。
大会2日目の同日、北朝鮮による拉致事件などの交渉にあたるために任命された日本の斎賀富美子・人権担当大使や米国のレフコウィッツ北朝鮮人権特使、日韓の拉致被害者の家族らが参加した。
韓国クリスチャントゥデイ紙によると、レフコウィッツ氏は、北朝鮮の人権問題に対する各国の関心がこれまで十分でなかったと指摘し、国際的な働きかけが必要と強調。同国の民主化の機会を逃せば安全保障や経済の安定の面で問題が長期化するとの認識を示した。
大会には日本の拉致被害者家族会の増元照明事務局長も出席。共同通信などによると、増元氏は拉致問題の現状を報告し「世界が連帯して金正日政権と対峙(たいじ)し、大きな圧力をかけなければ何も解決しない。経済制裁もためらってはいけない」と述べ、早期解決に向けた協力を呼び掛けた。
同日夜に家族会のメンバーと斎賀氏が面会した。ここでも家族会側が経済制裁など厳しい対応を求めたのに対し、斎賀氏は「人権担当という立場から政治的、道義的な観点で追及したい」と述べた。食糧支援の停止を含む経済制裁を発動させた場合、貧困層の食糧不足がさらに悪化するとの懸念がある。
大会では、北朝鮮に対する韓国政府の寛容な姿勢を批判する声もあった。外国からの経済支援は全て政府の軍備強化に充当され、圧制と人権の蹂躙(じゅうりん)に繋がるという。
韓国側代表のファン・クァンチョル氏は、90年代に国外からの食糧支援を受け取ったはずの300万人は既に餓死したと述べ、生存者は経済支援に頼らず自給していると報告した。
大会は「国連世界人権の日」の10日まで行われる。