世界の情報格差縮小をめざす国連の世界情報社会サミットが16日、チュニジアの首都チュニスで開幕した。インターネットの普及促進など新しい情報通信技術の開発、インターネットの管理者の問題などについて、各国の首脳や閣僚、民間企業の代表や非政府団体(NGO)関係者らが協議する。サミットに合わせ、フランス・パリに本拠を置く「国境なき記者団」は、同団体が「インターネットの敵」と認識する国のリストを作成、サミットの議場で発表する。1位は中国とイランで、これにベラルーシ、ウズベク、トルクメニスタンが続く。
共同通信によると、国連のアナン事務総長はサミットの席上で「新しい情報通信技術はあらゆる社会階層に利益をもたらす」と述べ、IT(情報技術)が途上国の経済発展を加速する可能性に期待を示した。アフリカなど途上国での無線通信が普及していることに触れ、この動きを促進する具体策について議論を進めたいと述べた。最終日には共同声明を採択する。途上国の情報インフラ整備に役立てるデジタル連帯基金の活用、インターネット管理体制のあり方を幅広く議論する協議機関の設立などを盛り込む。
日本からは竹中平蔵総務相や小野寺正KDDI社長らが参加し、ネット関連企業幹部や非政府組織(NGO)メンバーも分科会に分かれて議論。3日間の予定で最終日の18日には米国によるネット管理を当面容認する内容の声明案を採択して終了する。(共同)
国境なき記者団で「インターネット上の表現の自由」問題を担当するジュリエン・ペイン氏は、サイバースペースで人権の最大の脅威となるのは圧政的な政府であると指摘した。同氏は中国とイランを名指しして「これら2国を含め、世界中の独裁政権がウェブ上を巡回し、反体制活動家の取り締まりやサイトの検閲を開始しているとした。
ペイン氏は、サミット開催中の期間に「インターネットの敵」としてネット社会に圧力を加える国のリストを発表する予定だ、と海外メディアに明かした。1位は中国で、ネット上の表現の自由の侵害、組織的なネット検閲の規模において他国の水準を大きく上回っているという。同氏によると、中国政府は米国の複数の民間企業から検閲技術を購入し、中国政府を批判するネット言論に中国本土からアクセスできないよう設定した。
イランとベラルーシも中国と同様の技術を利用して言論を統制している。イランでは個人ブログなどに政府を非難する文面を投稿した市民がここ2年で相次いで逮捕されている。ペイン氏は、政府当局が既に数百万サイトを検閲システムで巡回しているとみている。政治関連の会話や政府批判をできないようにするのが目的という。ベラルーシでは、サーバ運営企業が政府資本で経営されているため、ネット上の情報を警察当局に容易に報告できる体制になっている。
トルクメニスタンやキューバでは政府の政策上、インターネットの普及が妨げられている。外資系企業と政府機関だけでしかインターネットが利用できない。ウズベキスタンでは、ISP(インターネットサービス・プロバイダ)企業に対する政府の圧力が厳しく、反政府的なサイトは強制的に閉鎖されるという。カリモフ大統領がネットの普及に前向きな姿勢を示したことがあったが、ペイン氏は「リップサービスだろう」とあきらめ顔だ。北朝鮮ではインターネット自体が民間に存在しないという。