インドネシアのスラウェシ島中部ポソで8日夜、キリスト教会付近の路上で女子生徒2人(ともに17歳)が何者かに銃で頭部などを撃たれ、9日未明、1人が収容先の病院で死亡した。もう1人も意識不明の重体。同地区では先月末にクリスチャン女子生徒3人が頭部を切断されて惨殺されており、警察当局は犯人の行方を追うとともに関連を調べている。宗教指導者はキリスト教とイスラム教の信者に対し冷静を保つよう呼びかけた。
殺害されたのはポソ地区の高校に通うシティ・ヌライニさん。イスラム教徒という。病院で手当を受けているのは同じ高校に通うキリスト教徒のイボンさん。2人は友人同士で、ペンテコステ派教会付近の路上で何者かに襲われた。
先月末の女子生徒襲撃事件では、遺体発見現場付近に「10代のキリスト教徒100人を殺害する」と書かれた紙きれが見つかっている。犯行当時、犯人が逃走中であることから、当局は今回の事件との関連を調べている。
宗教対立の激化を懸念した政府当局は軍の兵士1500人を島内に配置し、厳しい警戒態勢を敷いた。
ジャカルタ・ポスト紙電子版によると、国内第2の規模を誇るイスラム教組織ムハンマディヤ代表、シャムスディン氏は10日、プロテスタント組織「インドネシア教会共同体」を訪問し、幹部と面談した。同氏は両宗教の信者に対し冷静を保つよう呼びかけることを目的に共同キャンペーンの実施を提案した。
同氏は「イスラム教組織は、信者が過激思想に陥らぬよう指導を徹底すべきだ」と述べると同時に、キリスト教についても「イスラム教徒に憎しみを抱く組織の取り締まりを強化してほしい」と要請した。
インドネシア憲法裁判所のアッシディケ判事は、同紙面上で、宗教間の対立は意思疎通の不足と誤解が原因と指摘した。他宗教の伝統に対する無知と不理解を解消することが問題解決の鍵となるとしている。
国際キリスト教連帯(CSW)は地元キリスト教組織代表の話として、今回の銃撃事件は宗教対立を悪化させる目的で過激派勢力が計画した可能性が高いと指摘している。政府に対し、同代表は、宗教対立から国民を保護し、対立の拡大を防止するようCSWを通じて要請した。